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一般向けメールマガジン 第158号

HEART WEB NEWS No.158

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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第158号】2018年10月2日発行(月刊)
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【目次】
 お知らせ
 トピックス:胸痛症候群
 お知らせ:心臓の「叫び」に気づいてください。
 イベント情報
 ドクターのつぶやき:台風21号の直撃で思ったこと
 ご寄附のお願い

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【トピックス】

 胸痛症候群

 若い女性から日本心臓財団のセカンドオピニオンに寄せられる質問でよくみられるのが、原因不明の胸痛に関するものです。多くは10歳代から20歳までの女性です。
 この原因不明の胸痛について、セカンドオピニオン回答者の専門医に解説していただきました。

 これらのご相談のほとんどは胸痛症候群とよばれている胸痛に該当すると思われます。胸痛症候群とは「原因不明の胸痛をいう。胸痛の原因になる疾患のすべてが否定された状態を仮に一括していっておく場合に用いられる」と定義されており、実は仮に診断しておく原因不明の胸痛のことです。原因がわかれば、ここから除外されていきます。
 ちなみに、ある総合内科クリニックの統計(内科2018;122:485-488)では、初診時、胸痛を主訴としていた方の最終診断は狭心症8%、その他の心疾患5%、 肺・気管支疾患20%、消化器疾患10%であり、筋・骨格疾患20%、肋間神経痛 8%、心因性など17%、その他・不明11%であったということです。つまり、筋・骨格疾患、心因性、その他の計52%が胸痛症候群であったといってよいのでありましょう。

 胸痛症候群の痛みは、チクチク、ピリピリ、刺すような痛みが多いようです。10歳代から20歳までの若い女性にしばしば訴えられます。指で指し示すことができる範囲の痛みであることが多く、ピンポイントの痛みといわれたりします。痛みは身体を伸ばしたり、体位を変えたりすると消失したり、逆に出現したりします。
 成長期、思春期のこの年代によくみられて、日が経つと自然に軽快していく、というのが特徴であり、多くの場合は筋・骨格系の成長とかかわる胸痛なのであろうと考えられています。胸の筋肉の一部を摘まむと痛むことがあるのも筋肉痛とみる根拠となっています。

 同じような症状でありながら、後日に診断が明確になる特殊な場合があります。痛む箇所に発赤がみられ、やがて水泡ができて、ヘルペスであったとわかる場合、肋骨の下縁に沿った痛みであることから肋間神経痛と診断されるという場合、などがあります。肋骨の肋軟骨との接合部が局所的に腫脹していて、おさえると痛むのはテイーチェ症候群とよばれる肋軟骨関節炎です。このような局所の炎症は、みぞおちの剣状突起、鎖骨と胸骨をつなぐ胸鎖関節にみられることがあります。また、注意を要するものに気がつかないでいた肋骨骨折という場合があります。

 海外でも注目されていて、Precordial Catch Syndrome(プレコーディアル・キャッチ症候群)とよばれるものがあります。これらの文献では患者さん本人あるいはそのご両親に悩み事がある場合があるとされ、痛みの場所は心臓ではなく胸の筋肉部分(胸壁)であることをよく理解させた上で、戸外の運動を勧めることが提案されたりしています。

 若い人の胸痛は、狭心症など命にかかわるような心臓病が原因で起こることはほとんどなく、病院の検査で異常がなければ、こうした胸の外側の痛みである場合が多いといえます。

 セカンドオピニオンよくある質問より
 http://www.jhf.or.jp/q&adb/10/post_86.html

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【お知らせ】

 心臓の「叫び」に気づいてください。(ACジャパン&日本心臓財団)

 この7月から1年間、テレビ、ラジオ、新聞広告を通じて、日本心臓財団の新しいACジャパンの支援キャンペーンが放送されます。
今回も、ユニークな内容で、高齢者の心不全を予防するため、とくに治療効果の高い弁膜症の早期発見と適切なタイミングでの治療を啓発します。

 ACジャパンのキャンペーンの動画ページ(リンク)
 https://www.ad-c.or.jp/campaign/support/support_03.html

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【ドクターのつぶやき】
 
 台風21号の直撃で思ったこと
 ―長期の停電に備え、各医療圏で災害時の自家発電用重油の備蓄・供給センターが必要ではないか?-

 最近、世界的に異常気象による自然災害が多発し、いわゆる南海トラフ巨大地震もほぼ確実視され、このままでは日本はどうなるのか不安を持つ人が多い。

 2018年9月4日午後2時頃、最大風速55メートルという強い台風21号が神戸に上陸し、特に、東側の阪神地区、大阪、京都等に甚大な被害があった。
 私は病院の4階の部屋から外を眺めていた。強い風で瓦やトタン板のようなものが飛ばされ、空中に舞い上がり、電柱や電線にブツカリ、いたるところ様々なものが電線にぶら下がった。
 しばらくして、全病院が停電になった。直後に非常用電灯がつき、自家発電が作動したことを知った。3日間自家発電可能だということと通常の60%の節電にするようにとの院内放送が流れた。

 本院は災害拠点病院で3年前に新築開院したばかりで、発電機は高層階にあり、3日間の重油の必要量93,600トンを備蓄する巨大タンクもある。当然、免震構造で南海トラフの巨大地震にも対応できるように設計されている。それでも、救急入口のドア、小児科外来近くの窓、駐輪場の屋根等々で被害があり、職員全員が対応に必死であった。 その結果、外来も手術室も救急救命センターも電子カルテも通常のように動き、病院全体の業務に大きな支障はなかった。
 幸い、一般と異なり、特別配線のある私共の病院の電気は2時間ほどで正常化したが、市内の建物、病院等では翌日まで停電が続き、JR・阪神・阪急・近鉄等の交通機関は完全にマヒした。市内の信号が止まったために、バスは3日間正常化しなかった。

 近隣の病院からは自家発電用の重油切れになりそうで、ガソリンスタンド、関電、行政に問い合わせても全く対応してくれないとの悲鳴が上がった。さらに、自宅で人工呼吸器等を装着している患者に対する電源を確保できない等の多数の問い合わせがあった。 そこで、電源・酸素・吸引等の配管の設備がある一階講堂を臨時の緊急対応18床室として開放した。9月4日から3日間の本院の救急患者は212名で救急車車109台、台風関連患者49名、緊急に人工呼吸器・酸素供給・充電対応の必要な救急患者16名を収容した。

 さて、今回の災害で思ったことの第一は医療機関にとって、電気の確保がいかに重要か、そのためには各医療機関での自家発電用の重油の備蓄量と供給体制が死命を制するということであった。来るべき南海トラフ巨大地震のこと等を考えれば、災害拠点病院での備蓄とは別に、医療圏ごとに災害時の自家発電用重油備蓄センターと供給体制の整備が必要ではないか、さらに災害拠点病院の自家発電用重油の備蓄量が基準の3日間で十分なのかという思いを新たにした。(H.F.)

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