一般向けメールマガジン 第130号
HEART WEB NEWS No.130
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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第130号】2016年6月2日発行(月刊)
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2016年(平成28年)4月14日から発生しております熊本地震で被災された皆様に、心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧を祈念申し上げます。
【目次】
トピックス:脈拍の遅い不整脈(徐脈)
血管健康くらぶ
AEDサスペンスドラマゲーム
イベント情報
ドクターのつぶやき:超高齢社会とロコモ
ご寄附のお願い
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【トピックス】
脈拍の遅い不整脈(徐脈)
不整脈の中でも、脈拍が遅くなるものを徐脈性不整脈といいます。代表的なものとして、「房室ブロック」と「洞不全症候群」が挙げられますが、それぞれに病気ではないもの(治療の必要のないもの)から、ペースメーカの植込みが必要となるものまでがあります。
人間の心臓は、1分間に約60~80回の規則的なリズムで拍動を繰り返しています。心臓の「右心房」にある「洞結節」という場所でこのリズムが作られ、電気刺激となって、心房から心室へと伝達されます(刺激伝導系)。
心房と心室の間には、「房室結節」と呼ばれる中継地点があり、電気刺激を少し遅れて心室に伝えることで、心房と心室がリズミカルに連続的に収縮するようコントロールしています。
房室ブロックは、この房室結節を通過して心室に伝わる電気刺激が、何らかの原因で遅れたり途切れたりする状態です。
房室ブロックには「不完全ブロック」と「完全ブロック」があります。
不完全ブロックは電気刺激が時々心室に伝わらなくなるもので、多くの場合で治療は必要ありません。健康な方でも時々みられますが、迷走神経という自律神経の機能が高まることによって起こることが多く、この場合は生理的なものですのでまったく心配はいらないのです。
一方、完全ブロック(完全房室ブロック)は、電気刺激が心室へとまったく伝わらなくなるものです。心室に電気刺激が届かなければ、心室は自らの力でも拍動しますが著しく遅くなります。ペースメーカを植え込んで正常のリズムに戻すことが唯一の治療法です。
洞不全症候群は、リズムを作る場所である洞結節の働きが鈍くなる、または洞結節から心房への電気刺激の伝わり方が悪くなるものです。脈が遅くなったり止まったりしてしまいます。
心拍が長く止まってしまうと失神発作を起こすことがあり、これが洞不全症候群とよばれるものです。こうした場合には、ペースメーカの植込みが必要になります。
失神や、脈が遅い(徐脈)ことによる心不全の兆候がみられなければ、必ずしもペースメーカ植え込みの適応にはなりません。
参考:Medical Note 「徐脈性の不整脈について―ペースメーカが必要になる時は?」(監修:日本心臓財団)
https://medicalnote.jp/contents/160517-004-JO
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【血管健康くらぶ】
日本心臓財団と動脈硬化予防啓発センターが共同運営する動脈硬化予防サイト「血管健康くらぶ」では、動脈硬化の予防に生活習慣を改善するさまざまな情報を掲載しています。
血管健康くらぶ
http://www.doumyaku-c2.jp/
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【AEDサスペンスドラマゲーム】
皆さん、もうやってみましたか?
日本循環器学会と「減らせ突然死」プロジェクトが制作した、AED・心臓マッサージを楽しく学べるサスペンスゲーム「心止村 湯けむり事件簿」。
ある老舗の温泉旅館で倒れたひとりの男。そこからはじまる命をかけたサスペンスゲーム。 問題を解いていくと、自然とAEDや心臓マッサージの方法が身につくゲーム型のウェブコンテンツです。
AEDサスペンスドラマゲーム
「心止村 湯けむり事件簿」
http://aed-project.jp/suspence-drama/
または「AEDサスペンス」で検索
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【イベント情報】
□■慈恵PUSHコース開催
一般の方々を対象にした、簡易心肺蘇生コース「PUSHコース」
(胸骨圧迫とAED使用法に限定した、お子さんにもわかりやすい講習)
日 時:2016年6月4日(土)13:00~14:00(予定)
場 所:慈恵大学病院(新橋本院) 高木会館1階ロビー
東京都港区西新橋3-25-8
参加費:無料
申込み:http://www.atagoqq.org/event/show/107
*当日飛び入り参加も可。
□■第52回日本循環器病予防学会学術集会市民公開講座
「食事で脳卒中・心臓病を撃退!
~ニッポンデータ全国2万人調査で分かった最新情報~」
日 時:2016年6月18日(土)14時~16時(受付開始 13時30分)
場 所:埼玉県民健康センター2階大ホール
(さいたま市浦和区仲町3-5-1)
参加費:無料(事前申込不要)
共 催:日本心臓財団
内 容:
1:ニッポンデータ研究とは?
三浦克之(滋賀医科大学教授)
2:悪玉ナトリウムと善玉カリウムのはなし
奥田奈賀子(人間総合科学大学教授)
3:脂肪の種類を見分けるのが肝心!
岡村智教(慶應義塾大学医学部教授)
4:「大盛り」に要注意!
大久保孝義(帝京大学医学部教授)
5:食事が乱れるいろいろな原因とは?
西 信雄(国立健康・栄養研究所 国際産学連携センター長)
詳細:下記日本循環器病予防学会HP参照
http://www.jrisp.com/52jscdp/lecture/lecture.html
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【ドクターのつぶやき】
超高齢社会とロコモ
超高齢社会を迎え、健康寿命が注目されている。健康寿命は、介護の必要のない自立した生活が可能な寿命であり、2000年にWHOが提唱した概念である。
我が国は世界に冠たる最長寿国であるが、健康寿命も世界一である(男71.19歳、女74.21歳、2013)。しかし、更なる延伸のためには健康寿命の3大障害因子を克服する必要がある。それは、脳血管障害(脳卒中)、認知症の克服ともう一つ、ロコモティブ・シンドロームの克服である。
いわゆる「ロコモ」は、転倒・骨折により寝たきりになるリスクが高いからである。高齢者の寝たきりは命とりになることが多いため、転倒・骨折は他の重篤な疾患と同様に恐れられている。歩行中の転倒は、本人が気をつけていても避けられない程、高齢者にとっての危険因子であり、他の疾患で入院中であっても、病院側が最も気になるのが院内の転倒・骨折である。
とくに80歳を超えた高齢者は転倒のリスクが著増し、日常生活のなかでも転倒の機会が多くなる。その要因として「つまづく」「滑る」が多いが、ちょっとした突起物や小さな段差につまづくことが転倒につながる。
「歩く」ことは日常生活の基本動作であり、平素は歩き方など考える機会はないのが通常であるが、体重の移動や両下肢の協調運動など、実は高度な運動動作なのである。
したがって、幼児は一人立ちして歩けるようになるまで通常1年かかるが、これ程の長期間練習が必要なことは、むしろ異常なことである。ヒトよりも体重の大きい牛や馬の子どもも生後数分で立ち上がり、母親の乳房から乳を飲むようになる。歩くことに習熟期間はほとんど不要である。この違いは、ヒトが直立二足歩行することに由来するのはいうまでもない。
進化の歴史を遡ってみると、ヒトの祖先にあたるアウストラロピテクスは約400万年前に直立二足歩行していたことがわかっている。身長は現代人(ホモ・サピエンス)よりも小さく、頭蓋も小さかったようであるが、二足歩行し上肢は道具の使用や獲物を持って運んでいたことが推測されている。
その後ホモ・エレクトスが150万年前に出現し、身長も大きくなり、脳の大きさも現代人の3/4くらいの大きさとなり、知的能力もかなり発達していたと考えられている。
すなわち、人類の祖先は、直立二足歩行することにより、大きな脳を支えられるようになったわけで、それに伴い解放された上肢(前肢)が道具の使用や物資の運搬に使用されるようになったのである。
これが人類の進歩をもたらしたことは間違いないが、その代償として、1)二足歩行の習熟に長い訓練が必要になったこと、2)高齢になると筋力の低下やバランス感覚の劣化、骨粗鬆症の進行などのために転倒・骨折が生じやすくなることを犠牲にせざるを得なくなったのである。
転倒による骨折は、大腿近部位骨折(頚部骨折、大転子骨折)が多いが、これは四足歩行から直立二足歩行になったために大腿骨頚部に多大な加重がかかるようになったことによる。
100万年以上もかけて人類の祖先は進化を続けてきたが、超高齢者の「地球の歩き方」まで対応できていないことに気付く。
健康寿命をさらに延伸するためには、培われた脳の知的能力によって転倒しない歩き方、さらには転倒しても骨折しない方策を編み出す必要がある。転倒予防のためのキャリカー歩行や骨折予防のための骨粗鬆症治療薬は未だ充分でないにしても我々の知的能力によるアンチエイジング挑戦である。(M.H.)
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