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一般向けメールマガジン 第94号

HEART WEB NEWS No.94

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【日本心臓財団 HEART WEB NEWS 第94号】2013年6月1日発行(月刊)
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【目次】

TOPICS「重症不整脈を早期発見・予知する自動車」
イベント情報
特別寄稿 北村惣一郎
 ご寄附のお願い
                     
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TOPICS 【重症不整脈を早期発見・予知する自動車】

国際医療福祉大学三田病院 加藤 貴雄先生に聞く

 重症不整脈による心臓突然死は、いつでも誰にでも起こる可能性があります。
自動車運転中に起きることもあり、実際に東京23区内で年間約20件の突然死が起きており、そのうち心臓が原因と考えられるものが半数以上との東京都監察医務院の調査があります。
 死亡には至らない発症はかなり多いと思われ、場合によっては運転者だけではなく、同乗者や通行人を巻き込む事故も考えられます。

突然死の原因となる不整脈を予知することにより交通事故を防げないかと研究しているのが、日本医科大学・トヨタ自動車・デンソーによるJ-PACEプロジェクトです。
 ステアリング(ハンドル)にセンサーを埋め込み、運転者の心電図・脈波・血圧を連続的に解析します。
 突然死を起こす人の多くは、その原因となる不整脈(心室細動)を起こす1~2時間前に、自律神経が特殊な変化を示すことがわかっており、その動きを検知することで、カーナビから運転者に注意を促すことが可能になります。
 さらに危険な状態を検知したときには、車が自動的に道路の横に寄って停止することも考えられます。

 さまざまな試行錯誤を重ね、現在このモデル車ができあがっておりますが、公道での実証実験データを検証する手前で足踏みしています。
 そこに行政の大きな規制の壁が立ちはだかったのです。改造車としての国土交通省の許可や、医療機器としての厚生労働省の認可などが必要とされる可能性があるというのです。

 発案者の加藤貴雄名誉教授によれば、朝、車に乗ったら、「今日は気分はいかがですか?」と車が話しかけてくれる。昨日と違うデータを感知したら、「何か変わりはありませんか?」と声をかけてくれる。「そんなオーダーメードの優しい車ができることを夢見て研究を進めています」とのことです。

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【イベント情報】

 □■第49回日本循環器病予防学会・日本循環器管理研究協議会総会
   第78回市民公開講座(生活習慣病予防講演会)

   TAKE ABI in 金沢 2013
「あしの血圧でわかる脳や心臓の病気」

   日時:2013年6月15日(土)受付11時~
   会場:金沢市文化ホール 展示棟(金沢市高岡町15-1)
   測定:午前11時半~午後1時、午後2時~3時
   講演:午後1時~2時
     「血管の機能をみてみよう」-予防医学の立場から-
      山科 章 先生  (東京医科大学第二内科主任教授)
   主催:第49回日本循環器病予防学会
   共催:社団法人日本循環器管理研究協議会
      一般社団法人日本心・血管病予防会
     公益財団法人日本心臓財団
      サノフィ株式会社
協賛:オムロンヘルスケア株式会社
      オムロンコーリン株式会社

   *参加ご希望の方は事前申し込みが必要です。
   詳細:ホームページ http://www.jacd.info/gakkai/jacd2013/kouza/

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特別寄稿

 わが国の循環器病の臨床研究について感じることを少し述べてみます。臨床研究でエビデンスレベルAという高い成果を得るには、ランダム試験(無作為化比較試験:RCT)という方法が必要です。この臨床研究の結果によりEvidence Based Medicine(EBM)としての標準医療の指針やガイドライン作成は盛んとなり、世界的にも、また日本国内でも各学会は多数のガイドライン集を発信しているのはご存知のところです。
 最近は、EBMから一歩進め、新しい薬や新技術の治療効果を比較するRCTとして、Comparative Effectiveness Research (CER)が盛んになり、さらにこの結果に基づいて費用対効果を考慮したCost Effectiveness Studyが毎月のように著名な海外学術投稿誌に報告されています。わが国の厚生労働省もこのエビデンスに基づくCost Effectivenessの考えを保険医療制度に組み入れるべく、検討作業を開始しています。

 さて、外国の積極的なRCTによるコストを含む医療行為の再検証の動きの中で、わが国の循環器、特に外科系のRCTによる臨床研究成果はまったく発表されていませんし、計画すらないようです。確かに外科系新技術の効果比較には多くの困難が伴います。各施設間での技術的総合力の差はどうしてもバイアスとして残りますし、また薬物のRCTと異なり盲検がほぼ不可能です。欧米からの複数の外科系RCTの結論が異なることもありますが、このままでは、わが国はそれを享受するほかありません。
 日本では無作為に治療方法を分ける方法に対する患者意識も外国とは異なることが云われています。一方、がんの領域では日本でも多くの外科系RCTが行われており、患者登録もできています。循環器系医師に聞くと「がんはRCTが行いやすい」「内科系薬物RCTは行いやすい」と云います。確かに事実だと思いますが、循環器の外科系の国際RCTが日本を抜きにして、欧米、インド、中国、韓国等が参加して行われています。日本だけが自国内のRCTもないし、国際RCTにも参加していない、できないことを大変心配しています。

 2005年に私共はわが国発の冠動脈バイパス手術治療に関するRCT (JOCRI study; off-pump vs on-pump CABG)をCirculation誌に発表しましたが、それが現在に到るまで唯一のものとなっています。このRCTの成績をもとにオフポンプ手術(人工心肺装置を使わず、心臓が動いたまま手術を行う方法)の保険償還金額が少し高く算定されるという結果にも繋がりました。『循環器病の専門医、特に外科系の有志諸兄よ、わが国でも取り組んでほしいし、せめて国際RCTに参加できるようになってほしい』というのが私の願いです。

北村惣一郎
(国立循環器病研究センター・名誉総長)
(堺市立病院機構・理事長)

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