「笑い de ハートケア」は、笑いの提供を通じてより多くの方が心臓の健康について考えるきっかけをつくることを目的としています。笑うことは病気を予防したり、治療効果があることが知られています。それはストレスが身体にもたらす悪い作用を笑いによって防ぐことができる可能性があるからです。
今回は「楽しい落語」を追求し、いま大人気の注目の落語家・三遊亭 兼好師匠が、心臓の健康にまつわる落語を本活動のために書き下ろし。楽しみながら心臓について気にかけられる一席をウェブサイトで公開しました。さらに、誰でもこの落語を実演して楽しめるよう、無料で落語のシナリオをダウンロードすることが可能です。また、循環器専門医で「笑い」についても造詣の深い住吉 徹哉先生(日本心臓血圧研究振興会顧問)による、笑いと心臓病の関係についての解説を掲載しています。
標準的な治療を補いその効果を増すための「補完代替医療」として、これまで「音楽療法」、「アニマルセラピー(動物介在療法)」、「アロマセラピー(芳香療法)」などが知られていました。しかし「笑い」がストレスを解消し健康につながることは昔から経験的にも知られており、「笑い療法」もその一つとして台頭してきました。近年になって多くの分野で病気の治療や予防に対する「笑い」の効用が報告されるようになり、その仕組みを明らかにする研究が進んでいます。
ストレスは私たちの大脳の前頭葉などに影響し、視床下部から下垂体を介して副腎皮質ホルモンを増加させ、また免疫細胞である「ナチュラルキラー細胞」の活性を減少させ、免疫力を下げてしまいます。さらに自律神経系に作用して交感神経を緊張させ血圧や心拍数を上昇させるなど、身体にとって有害なことを次々に引き起こします。このようなストレスによる悪循環の経路を断ち切り、病気を予防するためには「笑い」がとても有用であり、それを実証する医学論文がこれまで複数、報告されています。
心臓病はストレスによりその発症が増加し悪化することが知られていますが、特に心筋梗塞や狭心症など重篤な冠動脈の疾患については、「笑い」や「ポジティブな感情」がその予防に効果があるという可能性を示した論文が複数発表されています。
カナダでは1700人余りを対象に、ポジティブな感情を持った人と抑うつ的な人で10年間の心筋梗塞・狭心症の発病率を比較 ※1 したところ、前者で発病率が低く、後者で高かったという結果が出ています。日本でも8万8千人を12年間追跡調査した研究 ※2 で、「あなたは生活をエンジョイしていますか」という質問に対し、「していない」と答えた人に心臟病の罹患率や死亡率が高いことがわかりました。
このように「笑い」は病気の予防や治療に効果があることが確認されていますが、そうは言っても「笑いたくても笑えない」という人も少なくありません。しかし笑う表情を作る、つまり「作り笑い」でも同等の効果があるという研究結果があります。鏡に向かってワザと笑顔を作ることでもいいのです。喜劇王チャップリンは「辛いときこそ笑いなさい」と言っています。また「幸福論」でアランは「幸福だから笑うのではない、むしろ笑うから幸福なのだ」と教えています。
日常に「笑い」や「ユーモア」を取り入れ実践することは、心臓病を予防し健康寿命を延ばすためにとても大切なことなのです。
心臓病(心血管疾患)は国民の死亡原因の第2位 ※3 を占め、また健康な人が突然死する死因のうち最も多いのも心臓病です。超高齢社会から、さらに人生100年時代に向かうわが国で、寝たきりを防ぎ健康寿命を延伸するためには、心臓病と脳卒中を合わせた循環器病への対策が不可欠です。このため2019年12月に「脳卒中・循環器病対策基本法」が施行されましたが、今年はいよいよ国家プロジェクトとして始動しその成果が期待されます。
心臓は1日に約10万回もの収縮と拡張を繰り返し、全身に血液を送り出す重要な臓器です。しかし加齢とともに狭心症や心筋梗塞、心房細動などの不整脈、弁膜症など心疾患にかかりやすくなります。適切な治療がなされないと心臓の機能が低下し、動悸や息切れなど心不全の状態になり、健康寿命の延伸に大きくかかわってきます。
近年、心疾患の診断と治療法の進歩は目覚ましく、早期に診断して適切な治療を行うことにより、多くの場合心不全への進行を防ぐことが可能になってきたので、息切れや胸痛などの症状を感じたら循環器専門医に行くことが大切です。しかし早期診断と並んで何よりも重要なのは、加齢とともに発症する疾患を予防する(あるいは進行を遅らせる)ことです。日ごろから健康に気を配り、バランスのとれた食生活や適度な運動を心がけ生活習慣を改善すること、そして毎日を楽しく、笑いとユーモアにあふれる時間を過ごすことが大切です。
サラリーマン等を経て1998年8月、28歳で三遊亭好楽に入門。2008年9月、真打に昇進して、兼好に改名。 テレビ・新聞他マスコミ登場多数。
循環器専門医、公財)日本心臓血圧研究振興会顧問。附属榊原記念病院前副院長、榊原記念クリニック前院長。医学博士。日本笑い学会会員歴15年。
日本心臓財団は1970年の創立以来、循環器病の克服に向けた研究の助成、予防啓発などに関する事業を展開する公益財団法人です。
世界に先駆けて超高齢社会を迎えた我が国において、「いくつになっても健やかに」の願いを達成するため、研究者や専門医と、患者・市民の架け橋となり、国民の健康増進と福祉の向上に寄与する活動を引き続き展開して参ります。
カリフォルニア州アーバインに拠点を置くエドワーズライフサイエンスは、構造的心疾患とクリティカルケアモニタリングに関する患者さんのための医療イノベーションをリードするグローバル企業です。患者さんを助けたいという情熱を原動力に、世界のヘルスケアの現場で医療従事者や関係者とのパートナーシップを通じて、生活の改善と向上に取り組んでいます。
※1Davidson KW, et al: Don't worry, be happy: positive affect and reduced 10-year incident coronary heart disease: the Canadian Nova Scotia Health Survey. Eur Heart J. 2010;31(9):1065-70.
※2Shirai K, et al: Perceived Level of Life Enjoyment and Risks of Cardiovascular Disease Incidence and Mortality The Japan Public Health Center–Based Study. Circulation. 2009;120(11):956-63.
※3出典:2018年人口動態統計(厚生労働省)