弁膜症とは
心臓には4つの逆流防止弁があり、それらが狭くなったり、開かなくなったりする異常の総称が弁膜症です。心臓には4つの部屋があります。全身から心臓に戻ってくる血液(静脈血、体の表面から青く見える静脈を通る血液)は、まず右心房という部屋に入ります。ついで右心室という部屋に向い、肺に送られます。肺で新鮮な酸素を取り込んで赤くなった血液(動脈血、体の表面からは見えにくい深い場所にある動脈を通る血液)は、左心房から左心室を経由して大動脈から全身に送られます。
つまり心臓の内側には、この血液の流れが一筆書きになるように、一旦通り過ぎた血液が元に戻るのを防ぐために逆流防止弁があります。この扉が『弁』で、その異常が『弁膜症』です。
心臓弁は、右心房と右心室の間(右心室の入り口)にある三尖弁と、右心室の出口にある肺動脈弁、そして左心房と左心室の間(左心室の入り口)にある僧帽弁と、左心室の出口にある大動脈弁、の四つがあります。通常、肺動脈弁と大動脈弁は3枚の弁葉でできています。
(日本心臓財団ハートニュースVol.44 2003年 N0.4)
弁膜の動きが悪くなると出口が狭く(狭窄)なり、血液が通りにくくなります。また弁膜が閉まらなかったり、壊れてしまうと逆流(閉鎖不全)が起こります。自覚症状としては、息切れ、動悸、全身倦怠感、浮腫といった心不全症状が現れたり、不整脈が頻繁にみられたりします。
異常の原因は色々ありますが、その原因により手術術式の選択、手術後の注意事項が少しずつ変わります。悪くなった弁を切除して人工弁を同じ位置に縫着するのが弁置換術、悪い部分を修復するのが弁形成術です。
最近は、高齢者など外科手術が困難な患者さんを対象に、開胸手術を行わずに、カテーテルという細い管を太ももの付け根などの血管から心臓まで入れて、人工弁を留置したり、弁を小さい洗濯ばさみのようなクリップで留める治療も行われています。
人工弁には金属性(主としてチタン)の機械弁と、ブタの大動脈弁やウシの心膜で造った生体弁があります。ともに世界中で使用されていますが、それぞれ特徴があります。(治療について:機械弁と生体弁をご参照ください)
監修:渡辺弘之(東京ベイ・浦安市川医療センター ハートセンター長) 2022年3月