心筋梗塞、虚血性心不全とは
心筋梗塞とは
動脈硬化が進行し、冠動脈にできていたプラークが破裂して冠動脈を完全に閉塞してしまい、心筋に血液が完全に行かなくなり、心筋が壊死してしまった状態が心筋梗塞です。
「突然に胸が焼けるように重苦しく、押しつぶされるような、締め付けられるようになって、冷や汗が出る、吐き気があったり、吐くこともある、長くつづき、10分以上、ときには数時間も続く」というのは心筋梗塞の症状です。痛みは多くの場合、狭心症のときよりも激烈です。
ニトロを含ませてもよいのですが、狭心症のときほど、有効ではありません。救急車をよんでください。
ただし、無痛性心筋梗塞といって、痛みの発作がなく、いつの間にか心筋梗塞になっている場合もあります。多くの場合は、心不全状態となってはじめて気付かれています。
心筋梗塞の治療
内科的治療法には、冠動脈内で詰まった血栓を血栓溶解薬(tPAなど)を静注して溶かす治療法や、風船(バルーン)が先についた細い管(カテーテル)を血管内に入れて、詰まった部分を風船で拡げたり、その後、再び閉塞するのを防ぐためにステントと呼ばれる筒状の金網を血管内に留置するインターベンション治療があります。
最近は、ステントにも改良が加えられ、ステントに薬を塗って血管の再狭窄を防ぐDES(薬剤溶出性ステント)と呼ばれるものが登場しています。
外科的治療としては、別の血管を使って詰まった血管部位を回避する道を作る冠動脈バイパス術があります。
虚血性心不全とは
「すこし歩くと息が切れる、休んでいると少し落ち着く、疲れやすく、だるい、下肢には浮腫がある」というのは心不全の症状です。
心臓の血液を送り出す働きが十分ではなくなったときや、歩いたりするような労作時には血液の循環不足の影響で、こうした症状がみられるようになります。浮腫(むくみ)を生じるのは、心臓の働きが不十分で末梢血管の血液が心臓に戻る力が弱くなり、血液がうっ滞するためです。尿の出は悪くなります。こうした状態を総称して心不全といいます。
心不全の原因には心筋症や弁膜症など、さまざまな病気がありますが、とくに多いのが心筋梗塞なのです。心筋梗塞のために壊死した心筋部分が大きいと、心筋が充分にポンプの役割を果たせずに、身体の要求に見合うだけの十分な血液を送り出せないため心不全状態となるわけです。
心筋梗塞を患っているのに、気がつかないでいて心不全になってからこれを知る場合があります。無痛性虚血性心疾患の一つのタイプです。
治療にあたっては、心筋虚血の改善を基礎として、心不全症状に対しての症状にみあった治療を行うことになります。心臓への負荷を軽くする意味では、動脈拡張薬を用いて動脈の抵抗を少なくすることで血液を送り出す負担を軽くしたり、静脈拡張薬や利尿薬を用いて心臓に戻る血液量を減らして負担を軽くしたります。利尿薬には浮腫を除く効果も期待できます。交感神経遮断薬は心不全時の自律神経の過剰な反応を落ち着かせるのではないか、と考えられます。
虚血性心疾患の致命的不整脈とは
「目の前を歩いていた中年の男性が突然に倒れて、そばによってみると、意識はなく、呼吸をしていない」ということがあります。可能性があるのは、心筋梗塞を起こして心室細動になったという場合です。すみやかに救急車を呼び、救急隊到着前に胸骨圧迫(心臓マッサージ)を行い、AED(自動体外式除細動器)を使用しましょう。
心室細動は心筋梗塞や狭心症の突然の発症のさいによくみられる致命的不整脈ですが、以前に心筋梗塞をしている人の場合には新しい発作を起こしたわけではなくても、突然に起こることがあります。
心筋梗塞の前兆とSTOP MIキャンペーン
心筋梗塞は、一旦発症すると約40%が死に至る非常に怖い病気です。心筋梗塞で入院した人の院内死亡率は10%以下と予後は良好ですが、心筋梗塞による死亡の多くは入院する前におこります。そのため、心筋梗塞を発症した人を助けるためには、一刻も早く病院へ救急搬送することや、AEDを活用して致死的な不整脈を止めることが重要ですが、それでも救命が難しい場合も多くありますので、やはり発症を予防することが重要です。
幸い、心筋梗塞で入院する人の約半数は、発症前に前兆を自覚していたことがわかっていますので、この前兆の時点で治療すれば心筋梗塞の発症を防げます。前兆を感じたらすぐに病院へ行くことが大切です。そこで、まずは前兆の存在を広く知ってもらう必要があり、そのための広報・啓発・教育活動がSTOP MIキャンペーンです。日本心臓財団は日本循環器学会と共に、この活動を推進しています。
妊娠と期外収縮、小学校の心電図検診でQS型といわれた、不整脈と弁膜症で心不全に、狭心症の疑いなど、日本心臓財団は7,500件以上のご相談にお答えしてきました。