ベントール手術と大動脈弓部置換手術
73歳の母について相談いたします。大動脈弁閉鎖不全症・大動脈弁輪拡張症・上行大動脈瘤で心不全です。当初はベントール手術の予定でしたが、CTの検査結果で、医師より弓部も大動脈瘤の傾向があるので、一緒に弓部大動脈置換術を行って、今後に危険を残さないほうがよいと言われました。
ベントールだけでも大手術なのに、さらに一番難手術と聞く弓部大動脈置換術をする危険性について(危険率10?20%とのお話)、循環停止になることによる脳への影響、後遺症、人工心肺装置使用長時間の影響について、教えてください。
回答
ベントールの手術に加えて、弓部大動脈置換手術を行うべきかどうかにつきまして一番重要な問題はお母様の全身的な状態がどうであるかということです。病名の中に心不全とありますが、その他に全身の状態、加えて脳の状態がどうかということも、大きな判断材料になると思います。73歳であっても、かくしゃくとしておられるのであれば、手術はやはり両方とも行うべきでしょう。大動脈弁閉鎖不全を治して、心不全だけを取り除きたいというような状況であるならば、ベントール手術だけで留めるのも一つの方法であると思います。
お母様が普通に生活をしておられる状態であれば、両方の手術をして差し上げるのが妥当であると思います。危険は確かに若干は増えると思いますが、ベントール手術でも、大動脈にメスを加えるのであり、それを弓部大動脈全体に広げるというのは、昔考えられたほど危険を増やすものではありません。危険率10?20%と言われる範囲内であると思います。但し、これについては全国的な集計結果はありませんので、正確には述べられません。
問題は、脳への血液循環を手術の間如何に維持できるかということと、その時に弓部大動脈の中にある色々なものが脳の血管へ流れないようにうまく処理できるかどうかということです。つまりそれによっては、術後に脳障害を残すという危険があるからです。この点は担当医によく話を聞いておかれるのが良いと思います。
人工心肺装置を長時間使うことの直接の影響はそれほど大きくはないと思います。手術を予定しておられる医師が、弓部大動脈の置換も必要と判断しておられるということは、恐らくお母様の状況がそれをするに相応しいと判断しておられるのだと思います。大動脈瘤や解離が弓部全体に及んでおり、かつまたその他に特別な不具合がなければ両方の手術をお受けになったほうが良いと考えられます。