疾患別解説

疾患別の解説と過去の相談事例がご覧いただけます。

孤立性上腸間膜動脈解離の診断と治療

43歳 男性
2006年9月30日

先月末に最初は胃と背中、次に脇腹と背中の痛みが3度にわたり発生し、血液検査、超音波検査、胸部MRIを行ったがわからず、腹部MRIで孤立性上腸間膜動脈解離の疑いがあると診断されました。
MRA造影検査を行った結果、上腸間膜動脈解離と診断されました。血管が15ミリくらいに膨らんでいるとのこと。ただし、真腔、偽腔に血流はあるそうです。治療方法は、まだ決定していません。ただし、ステントグラフトについては、病院で相談したところ、血管が細いということと年齢が若いということでリスクが高いため除外しました。この病院で血管専用の超音波検査が可能ということで、来月に検査しどうするか決めようとしています。
相談したい内容を以下のことです。
1)保存的治療の場合、閉塞、破裂による死の危険があると脅かされていますが、すぐに死に至るのでしょうか。
2)解離している血管が、自然に修復するということはあるのでしょうか。
3)バイパス手術の場合、手術後、閉塞を防ぐために薬を飲み続けないといけないと言われています。保存治療でも閉塞の心配があるし、体を傷つけてまで手術するメリットが見つからないのですが、バイパス手術の危険性及び術後の管理について教えてください。
4)超音波検査でよくわからない場合は、危険はありますが、造影CTもしくは血管撮影をしたほうがよいのでしょうか。造影剤には少し湿疹等のアレルギーが出ます。

回答

最初におことわりしますが、上腸間膜動脈のみの解離というのはきわめてまれなケースであり、本当にその部分だけかということも含めて、さらに詳しい検討が必要であると思います。血管専用の超音波検査(心エコー)が可能で、来月に再検査されるということであれば、その検査結果を待ってから判断されるのが適当であると思います。ただ、その検査の結果を見る前に予備知識としてのご相談であるかと思いますので、一応箇条書きにされた件についてお答えします。

1)上腸間膜動脈が閉塞したり、あるいは解離部分の破裂の場合には明らかに危険です。余程起こってから早い時期に外科的治療を行なわない限りは、その危険は非常に大きいと思います。

2)解離している血管が自然に修復するということは、まずあり得ないと思います。ただ、解離している血管が血栓によって解離部分が詰まるということはあり得ますが、これも決して高い頻度が期待できるわけではありません。

3)バイパス手術術後の薬の服用ですが、これはあまり厳格に行なわなければならない種類のものではありませんので、飲み続けるとしてもそれほど日常生活の妨げになることではないと思います。また、術後の経過を見て、服薬を止めることも有り得ます。
バイパス手術は、単純な血管吻合ですのでそれほどの危険があるとは思いませんが、同様の手術症例は少なく、したがって経験例からどれくらいの危険であるかを申し上げるのは困難です。またこの場合、どのような血管をバイパスに使用できるかということも、遠隔期の予後を左右する大きな問題であると思います。すなわち、これに適した血管をみつけることはなかなか困難だからです。

4)超音波検査でわからない場合にはどうするかということですが、確かに今書いておられる程度の情報で治療方針を決定するのは困難なところがあります。したがって、可能であれば血管造影を行なった上で方針を決められるのがよいと思います。

あまり明確なお答えはできませんが、それは最初に申し上げた通り、正確な診断がつけられていないことによるものとお考えください。

この回答はお役に立ちましたか?

病気の症状には個人差があります。
あなたの病気のご相談もぜひお聞かせください。

高齢者の心臓病 高齢者の心臓病
CLOSE
ご寄付のお願い