大動脈損傷による人工血管置換術後の解離
主人は、交通事故による大動脈損傷により、緊急にて人工血管置換術を施術しました。その際、欠損部分以下の大動脈に解離が起こりましたが、その手術の際に人工血管に置き換えた上の部分にも解離が発生しました。
医師の話では、最初の大動脈損傷の治療である人工血管置換術については成功と言えるが、 今現在その後に発生した解離により、脳に至る部分の動脈及び心臓の脇まで解離が進んでいるため、心臓の脇には血栓があるとのこと。ただし、それは12月の手術の際に出来たものと考えられるため、血栓そのものが大きくなるような変化は見られないが、小さくもなっていない。手術後の肺の回復が思わしくなく、長い期間気管切開を施していたため、現在その部分にMRSAが出ている。その消失を待って今回解離が発生している部分も全て人工血管に換える予定であるとのこと。
そこで、相談ですが、
1)今後回復を待って予定されている手術が、かなりのリスクを伴う手術であることは理解しています。そのリスクを覚悟の上でも手術しなければいけないものなのでしょうか。
2)具体的にどのようなリスクが考えられるのか。
3)その手術そのものが成功したとして、どの程度の社会復帰が望めるものなのか。
4)現在、本人には血栓が破裂してはいけないからという理由で安静を義務付けていますが、きちんと状況を説明したほうがいいのかどうか。
5)ご相談すべき内容ではないのかもしれませんが、加害者にも今の状況をきちんと医師から説明してもらったほうがいいのかどうか。
医師からも毎回きちんと説明も受けて理解しているつもりです。でも最初に全てお任せしますとは申し上げたものの、交通事故だからなのかどうか、生かすということだけに焦点が置かれているように思います。彼にはまだ今後の人生があります。私自身はどのように捕らえ、どのように対応していくべきなのか、ご助言ください。
回答
ご主人様の病状についてのご質問にお答えします。
1)大動脈の解離は、部位と大きさによっては血栓で詰まって自然に治癒する場合もありますが、お話頂いているような内容ですと、どちらかといえば難しいと思います。リスクはかなり高いとしてもまだお若い方ですし、手術をお受けになるほうが良いと思います。
2)具体的なリスクは、手術による病院死亡が10%くらいは考えなければならないことが一点です。今ひとつはこの手術の場合、脳へ行く血管に血栓や血管壁の破片などが流れて術後に四肢の麻痺などの神経症状を残すこともあることですが、外傷性の場合、血管壁の状態は比較的良好と考えられ、また血栓もそれほどは出来ていないのではないかと想像されますので、そのリスクは比較的少ないかもしれません。
3)手術に成功した場合の社会復帰は重労働というわけにはいかないかもしれませんが、一般的な建築士としての仕事なら可能であると思います。
4)現在の動脈解離が更に進行することを防ぐために守るべき事柄は、なんとしても血圧を上げないということです。それ以外の体動ということについては、まっすぐ上を向いて寝ていなければならないというものではありません。医師によくご相談になって運動の仕方をお決めください。本人にきちんと説明されたほうが良いのは勿論です。
5)交通事故の加害者に対しても当然ご説明になった方が良いと思います。
病院が生命を生かすことだけに焦点を置いているように思うとのことですが、この病気の場合には生命が危機に晒されていますので、その維持をはかるのは当然の処置であると思います。また、手術の結果によっては術後にいろいろな後遺症、続発症を残す可能性も多い病気です。そういうことも十分説明をお受けになって覚悟をしておかれることが必要であると思います。突然の発症の場合、なかなかその事実を受けとめにくいこともあろうかと思いますが、やはりここは正面から現在の状態を正視して、対処されなければならないと思います。