大動脈解離について
主人は6年前に僧帽弁置換手術、3年前に大動脈を人工血管にする手術をしています。
それ以降は、定期的にレントゲンをとって経過を見ていますが、解離はそれほど広がっていないと言われていました。
先日、夕方に職場で胸と背中の強い痛み(波のようにくる痛み)を訴えて、救急外来にかかりました。
レントゲン、CT、血液検査をしましたが、白血球の数値が若干高いものの、解離や心筋梗塞は見られない、原因はわからないと言われました。痛み止めを飲んで自宅に戻り、翌日にはかなり痛みも治まり歩いたりもできるようになりましたが、3日後の深夜に同じ痛みが起こりました。
手足が非常に冷たくなっており、本人は話すこともできないほどの痛みでしたが、救急外来に電話をしたところ「3日前に処方した痛み止め(ロキソニン)を飲んで45分たっても痛みが治まらなければ救急に来なさい」と言われました。
ロキソニンを1錠飲んだところ、40分ほどで痛みはやわらぎ、眠ることができました。
その後痛みはないのですが、さらに3日後に外来にかかったところ、「ロキソニンで治まるくらいの痛みであれば解離である可能性はまずない。また痛くなったらロキソニンを飲みなさい」ということで、ロキソニンだけ処方していただきました。
マルファン症候群の主人に大動脈解離ではないかと思われる痛みが2回、主治医は解離の可能性はまずないとおっしゃり、特に検査をする予定もなく、何が原因か検討してくださいません。本人はそれを聞いて安心しきっておりますが、原因もなくこのような痛みが起こるのでしょうか?
解離である可能性は本当にないのか、解離でないならどのような可能性があるか、教えていただければと思います。
回答
6年前に僧帽弁置換術、3年前に大動脈の人工血管置換術を受けられたマルファン症候群の患者さんで、定期的にX写真をとり、経過観察がなされていると拝見いたしました。
現在まで、大動脈解離を疑わせる激痛が2度起こり、ロキシニン服用により、2日くらいで治まっている。その疼痛が解離によるものか否かについての質問と思いますが、まず大動脈と大動脈解離についてまとめてみます。
1)大動脈は、上行大動脈、大動脈弓、胸部下行大動脈、腹部下行大動脈の4部位に分けられます。
2)大動脈解離の分類
(1)DeBakey分類
I型:上行大動脈、大動脈弓、下行大動脈まで及ぶもの
II型:上行大動脈に限局するもの
III型:左鎖骨下動脈分枝以降の下行大動脈へ限局するもの
(2)Stanford分類
A型:解離が上行大動脈に及ぶもの
B型:左鎖骨下動脈以下の下行大動脈にとどまるもの
症状についてはDeBakeyI型とII型は前胸部に激痛が生じ、III型またはStanfordB型は背部に激痛が生じる。背部痛は背臥位になると増強することが多い。またIII型またはB型の場合は、手術療法よりも内科的降圧療法の方が、予後が良いとされています。
2度にわたって生じた激痛が、解離でないと断定することは出来ないと思います。一応、解離が起きていないことを確認してもらった方がよいと思います。小さな解離でも、レントゲンではっきりしないものでも、造影CTをとれば診断できることが多いと思います。なお、解離による激痛では、冷汗を伴っていることが多い。
大動脈のどの部位に人工血管置換術を受けているかによって症状も異なると思います。
また大動脈の人工血管置換術には、人工血管のみを置換する場合と大動脈弁付きの人工血管を使用するベンタル(Benthal)手術とがあります。どの方法を行ったかによって愁訴が異なることがあります。