機械弁の音が気になる
4年前、僧帽弁置換術を受けました。しかし、機械弁の音がうるさく感じられ、うつ状態になっています。現状をどうにかしたく、生体弁に変えられないか悩んでいます。
主治医に相談したところ、リスクが高く、必要な手術ではないと判断するから、執刀は許可できないとのことでした。しかし、とにかくこのカチカチ音から開放されたいと思い、相談いたしました。
回答
大変困った問題であると思います。機械弁の音は、昔の弁に比べるとはるかに小さくなったのですが、それでもやはり気になる人には気になるのだと思います。しかし、担当の医師がおっしゃるように、僧帽弁の再手術による死亡率は全国平均で7%ほどありますので、その点からも再手術は避けたいところです。
必要でない手術と判断するので執刀できないということについては、循環器病の治療という立場からすると必要な手術ではありませんが、昔の音の大きい人工弁のために精神病になってしまったような人もあることはあります。現在使われている人工弁はそんなに大きな音はしないので、あなたのような悩みを訴えられることはきわめて稀ですが、音の大きさは患者さん一人一人によって感じ方は異なり、第三者がとやかく言うのは難しいことです。しかし一般的な手術適応にはなっていないのは事実です。
したがって、この悩みを解決するには、まずは精神科医と相談されるのが良いかと思います。人工弁の音のために精神病になりそうで、それを防ぐためには危険を冒してでも手術したほうが貴方の人生にとって良いと精神科医が判断して、その必要性を診断書に書いてくれれば、心臓外科医も手術を引き受けるのではないかと思うからです。人工弁による弁置換を昔からたくさん行っている施設であれば、そのような相談を受けられた医師もおられるかと思います。担当医に直接精神科医を紹介してくださるように相談してみるのも一つの方法ではないかと思います。
しかし、あくまでも心の持ち方で再手術が必要でなくなるのが一番良いわけですので、そのようなカウンセリングをお受けになるのが第一だと思います。人工弁ではなくても世の中には年齢とともに耳鳴りがひどくなって困っておられる人が実にたくさんおられますが、これは多くの場合、良い治療の方法がないのでやがてその音に慣れられて気にならなくなるものです。4年間悩み続けておられるのではなかなかそれも難しいかもしれませんが、逆に言えば4年間耐えて来られたのだからとも言えると思います。精神科に相談されるのが一つの方法だと思います。
なお、貴方の年齢で音のしない生体弁に取り替えると、多くの場合10年以内にその弁がうまく働かなくなり、もう一度弁を入れ替えなければならなくなる可能性が大きいことも知っておいていただきたいと思います。