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40歳の心内膜症欠損症の手術について

40歳 男性
2007年12月16日

今年の夏に眠れない日があり、血圧が180/110と高かったので、近くの総合病院で診察を受けたところ、胸部レントゲンで心臓の右側に肥大がみられるとのことでした。後日、エコー検査で心内膜床欠損症と診断されました。紹介状を頂き、別の総合病院に行き、改めてレントゲン、経食道エコー検査を受けましたが、前の病院同様の回答でした。さらに検査入院をして両心カテーテル検査や冠動脈造影検査等を行いました。結果は、1.8cmの欠損孔があり、Qp/Qs=2.7、僧帽弁の軽い変形が認められたとのことで、主治医より手術適用とのお話がありました。

もともと自覚症状があって病院を訪れたわけではなく、現状はまったく周りの人と同様に生活しており、週4日、スポーツジムに通っています。それゆえ手術適用との結果に大変驚いております。
そこで相談したいことですが、
1)私の検査結果は、年齢も考慮して手術適用なのでしょうか。また症状としてはどれくらいの程度なのでしょうか。
2)現状では特に症状が出ていないのですが、手術しない場合、どのようなことが想定されるのでしょうか。
3)成人の心内膜床欠損症の症例はあまりないようですが、どのような手術を行うのでしょうか。また、手術の難易度はどの程度なのでしょうか。
4)術後、不整脈が出ることが多いとのことですが、不整脈とはどのような症状が出るのでしょうか。術後常に出るものでないのであれば、どれくらいの期間出なければ大丈夫というような期間はあるのでしょうか。現状が健康なだけに、手術をしてかえって不健康になってしまうような気がして心配です。

回答

不完全型の心内膜床欠損症の手術適応を考える上で一番重要な資料は、QP/QSと肺動脈圧です。貴方の場合はQP/QSが2.7で孔の大きさが1.8cmと診断されておられるので、それ程高度な肺高血圧にはなっていないのが普通です。しかし既に40歳になっておられることからすると、若干の肺高血圧症はあるものと思います。この点については検査を受けられた病院でお尋ねになってみるのが良いと思います。

ご質問の件についてお答えします。
1)手術適応については、やはり適応と考えていいと思います。手術を急ぐ必要があるかどうかは先ほど申し上げました肺高血圧がどの程度存在するかによります。

2)手術をしない場合には、徐々に肺動脈圧が上がってきて、右心室に負担がかかり、最終的には右心不全の状態になる可能性があります。また、僧帽弁に軽い変形が認められるということですので、この部分から将来僧帽弁閉鎖不全になる可能性があります。そうなった場合には、一層心臓への負担が大きくなり、心不全症状になる場合も起こりえます。

3)成人の心内膜床欠損の症例はご指摘のように比較的少なく、わが国で年間100例くらいです。手術はご自身の心臓を包んでいる心膜を使って、欠損孔を閉鎖するのが普通ですが、僧帽弁の変形に対してはこれが逆流を来たしているようであれば、その修復を行います。まったく逆流のない場合には、そのまま放置する場合もあります。
手術の難易度はケースバイケースですが、欠損孔の閉鎖そのものはそれ程困難ではありません。心室中隔欠損の手術と同じ程度の難易度かと思います。ただし、僧帽弁の変形を修復するとなると少し難易度は上がります。一番最近のデータとしては、2005年に全国で行われた不完全型心内膜症欠損症の手術成績の集計が報告されていますが、全国で100例の手術が行なわれ、1歳以下で手術を必要とした患者さんが一人術後に亡くなっています。それ以外の99人は健在で、1歳を過ぎてから手術した患者さんの中には死亡例はありません。

4)心房中隔欠損の術後に起こる不整脈は、心房を切るということも影響しますが、欠損孔が存在したままで、右心系に負担がかかった状態が長期間続いたということも関係しています。というのは、心房中隔欠損症は高齢になってから手術した人ほど、術後に不整脈が出ることが多いからです。どれくらいの期間、出なければ大丈夫かというはっきりしたデータはまだないと思います。
不整脈がなくても、心房中隔欠損が存在するとこれを通って身体から帰ってきた血液が肺を通らずに体や脳に流れます。身体のどこかで血栓ができると、これが脳に流れて脳血管に詰まり、いわゆる脳卒中になる危険がわずかですが存在します。手術をしてしまえば、そういったことが起こる可能性はなくなりますが、不整脈になると左心房の中にできる血の塊によって同じようなことが起こり、その場合には命にかかわる場合もあります。したがって、術前術後を問わず不整脈が出てくれば、抗不整脈剤で治療する他、それが有効でない場合には血液が固まらないようにする薬を服用する必要があります。

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