心筋炎の再発
1年ほど前に劇症型心筋炎になり、大動脈バルーンパンピング(IABP)、心配補助循環装置(PCPS)を使った治療を受けました。2ヵ月後に退院し、その半年後には社会復帰いたしました。
しかし、その4ヵ月後に強めの疲労感と動悸にて受診したところ、心筋炎再燃と診断され、入院治療。2ヵ月後、社会復帰して、現在に至ります。
薬を服用している中での再燃だったので、先生もやや首をかしげておられました。慢性化が考えられるとのことですが、それを明らかにするためには生検が必要で、生検に関しては、リスクもあるので簡単にはすすめられないとのことです。
また、運動は、症状が出ない程度のウォーキングやジョギング程度はOKで、仕事は体を動かす仕事でなければOKとのことでした。
一度慢性化した心筋炎が治癒した症例はありますか。また可能性は考えられますか。
慢性化の場合、出産や育児の体力が気になります。個人差の問題もあると思いますので、過去の症例からみてアドバイスいただけるとありがたいです。
慢性化の場合、寿命全うできる可能性はやはり低くなりますか。
また、心筋生検に関してですが、メリットとデメリットをお教えいただけますでしょうか。
回答
はじめに、思いがけなく重症の心筋炎に罹患されましたが見事にご快復されたとの由、本当に良かったと存じ上げます。それにもかかわらず、4ヶ月後再燃の疑いありとの告知を受け、さぞかし落胆されたことと深くご同情申し上げます。
IABPやPCPSによる補助循環を必要とする劇症型心筋炎は致命率が高く、今もなお難治疾患のひとつです。また急性期を凌ぎましても、回復期以後の患者管理や疾病管理に課題を残しており、対応の難しい疾患として知られております。
まず、質問には一般論としてお答えしますことをお許しください。
劇症型心筋炎は19世紀から注目されてきた心臓病ですが、日本循環器学会がまとめた成績によりますと、現在でも40%の方が死亡している怖い病気です。みごと回復できた患者さんの長期成績(3年)でも20%の方が後遺症に悩まれております。また3%の方が心筋炎の再燃でした。
したがいまして、貴方様の最初のご質問、再燃される方は残念ながら存在いたします。
これには二つの考え方がありまして、最初の心筋炎が遷延する場合と、新たに心筋炎に罹患する場合です。実験レベルでは両方とも証明できますが、ヒトの場合ではどちらであるか特定できかねることが多いのが実情です。
ただ、再燃はそんなに多い事例ではありません。私たちは、血液検査や心電図、それに心エコー図、MRI、心筋シンチなどで十分に再燃が疑われる場合には心臓カテーテル検査による心筋生検を行い、診断を確定した後に薬物療法を行っています。
多いのは、心筋炎によるダメージ負担が大きく、そのために慢性心不全に陥る場合です。早く対応しないとドンドン心臓のポンプ作用が障害されて入退院を繰り返す難治性患者になる恐れがあります。劇症型心筋炎回復期にはこまめにハートチェックを繰り返し、必要であれば治療を強化することが肝要です。
正しい患者管理と疾病管理を受けられていればあまりご心配する必要はないでしょう。
心筋生検に関しては、心筋炎の再燃が強く疑われる場合は、心筋生検にて診断を確定するのが現状の診断技術レベルです。正しい診断にまさる良い治療はありません。
最後に、重症心筋炎に罹患なさった事実を受け入れる気持ちが大切です。その上で、この病気に対して正面から向き合い、十分な患者管理を受け、また自ら協力して疾病管理を全うされることをお薦めいたします。心臓病を経験するとありとあらゆる症状を心臓病のせいにしがちです。しかし、過度な心配をなさる必要はないのが通常です。正しい対応のもとに人生を謳歌されることを希望いたします。