ファロー四徴症の頻度と術後の予後
わが国における子どものファロー四徴症の発生率が、一般にどれぐらいか教えていただけませんか。また、手術をした場合の生存率など、数値があれば教えてください。
回答
手元にある資料でわかる範囲でお答えします。
ファロー四徴症の実際の発生率がどれくらいであるかという統計はありません。しかし日本胸部外科学会が毎年手術を受けた患者さんの数を集計しています。現在我が国ではファロー四徴症で生まれた患者さんが手術を受けずに死亡することはきわめて少ないと思われますので、手術数が大体出生数と見てよいと思います。それによると、2003年、2004年、2005年の3年間の平均で、ファロー四徴症の手術数は約580名です。この中には普通一般にファロー四徴症といわれる患者さんが447名、ファロー四徴症極型といわれる肺動脈が完全に閉鎖した患者さんが133名です。
最近の日本の出生率は大体110万人足らずですので、出生数1万あたりのファロー四徴症の出生率は4.1名、ファロー四徴症に肺動脈閉鎖を伴ったものは1.2名、合計して5.3名くらいだと思います。また前者の手術死亡率は全国平均で2.2%、後者の重症な方の手術死亡率は、平均で6.6%です。ここでいう手術死亡というのは、いろいろな合併症によるものすべてを含めて、退院することなく死亡した人の総数です。また根治手術の前に行われることのある姑息的手術による死亡は含まれていません。
遠隔成績についてはまだ全国的な統計はありません。きわめてわずかな報告しかないと思いますが、1956年から68年までの間に大阪大学で手術を受けられた人の25年生存率は、約85%です。しかし近年手術方法の改善によってこれは著しく向上しており、今から25年ほど前に手術を受けた患者さん、その頃の手術は平均2歳から5歳くらいの間に手術しておりましたが、その人たちの25年後の遠隔成績は生存率98%です。ただしこれは大阪大学で手術を受けた人の遠隔成績で、おそらく全国平均よりもかなり良好な成績であると思われますので、これは一般的な25年生存率ではありません。