無血手術は可能か
生後3日目に心雑音があるとのことで、産院でレントゲンとエコー検査をし、心室中隔欠損症・肺高血圧・両大血管右室起始症と診断されました。
心臓専門病院に転院し、2週間後、再度レントゲン・エコー検査をしたところ、大動脈はやや右よりだが右室起始というほどではないとのことでした。
心室中隔欠損は1センチです。
1ヶ月半入院後、退院し、現在は2週に1回外来で受診しています。
主治医のお話では、哺乳量も体重も順調に増加しているため、利尿剤で心不全のコントロールをしながら、時期をみて心室の孔を塞ぐパッチ手術をするとのことです。
肺高血圧を伴っているため、あまり手術を先延ばしにもできないとのことで目安は3ヶ月だそうです。
肺動脈や肺に異常がなければパッチ手術1回で済むとのことですが、右胸心のため肺動脈のねじれや左右の血流量の違い、左右の肺のバランスが悪い可能性もあるので、その場合はまた別の手術が必要になるかもしれないというお話でした。
肺動脈や肺の詳細はカテーテル検査をしてみなければわからないとのことですが、カテーテルも小さい体には負担になるとのことで手術前(3ヶ月頃)に行うとのことです。
1)子どもは現在5kgですが、7?8kgにならないと輸血なしでは手術できないと主治医に言われています。ネットや本でみると3?4kgでも無輸血で手術可能という病院や先生がいらっしゃいますが、それは設備や技術、方針の違いなのでしょうか。それぞれの症状によって無理な場合もあるとは思いますが、できることなら無輸血で手術をしてもらいたいと思っていますが、無理なのでしょうか。
2)確かに呼吸も速く、汗も多く、手足が冷たい時もあるので肺高血圧の症状は出ていますが、哺乳量も体重も減っているわけではないし、本人は病気とは思えないほど血色もよく元気です。主治医は「常に心臓と肺に負担がかかっているのであまり先延ばしはできない」と言っています。現在2ヶ月半ですが、本当に3ヶ月頃に手術するのが妥当な時期なのでしょうか。
3)心室中隔欠損症を伴う右胸心は肺や肺動脈に異常をきたしている可能性があると伺いましたが、右胸心の場合そのような肺動脈・肺になんらかの異常が起こる確率は高いのでしょうか。具体的にはどのような異常が考えられるのでしょうか。
4)もし肺動脈や肺に問題がなく、心室の孔を塞ぐ手術が成功すれば、今後一生手術の必要性はないのでしょうか。
回答
1)無血手術は、比較的最近行われるようになった方法です。無血手術は、輸血によって起こる可能性がある合併症(現在の方法では、チェックできない感染症など)は除かれると言うメリットがあります。しかし、無血で行うために手術時の工夫が必要ですし、術後の貧血が問題になります。体重の十分な子どもの安全性は、かなり高いですが、体重の小さい子どもは、術直後の急激な変化に対応する予備力が元々少ないと考えられます。このような場合、無血による貧血が強いと、不利になりますし、安全性を確保できないことになりかねません。輸血をした場合の輸血による将来的な合併症の可能性と輸血をしない場合の手術の危険性とを比較して、無血で行うかどうか決定することになります。
たとえば、5kgの子どもに無血手術で行うかどうかに関しては、多少のリスクがあっても、無血で行うとする施設と、安全性を第一と考えて、従来のやり方で、無血でなく手術をする施設があると思います。現在、いろいろな工夫をとりいれて、かなりの低体重で行う施設もでてきましたが、無血を行う場合の体重の下限をいくつにするかは、施設の考え方に依存する場合が多いと考えられます。
2)肺高血圧が進行してしまうとアイゼンメンゲル症候群と言われる状態になります。この場合は、欠損孔を閉じると非常に危険で、早期に死亡してしまうため、欠損孔を閉じられないので、そのまま、みていくことになります。ですから、この状態になる前に手術を行うことになります。
また、肺高血圧があると、風邪を引いたり、ひどく泣いた後などに蒼白発作を起こして、急激に状態が悪化する場合があります。このため、新生児の時期を過ぎて、手術の危険率が高くなくなる時期、さらに、蒼白発作、肺血管の非可逆的な変化が起こる前に、手術を行うことになります。
3ヶ月頃に手術するのが妥当かどうかは、疾患の状態によって異なります。6ヶ月過ぎまで、待てる場合もあります。子どもの状態、肺高血圧の程度、心不全の程度、手術の安全性、無血手術の可能な時期等をすべて総合して手術時期を判断します。
3)右胸心でも、体のすべてが左右入れ替わっている場合は、肺動脈・肺に特に異常はないことが普通です。ただ、内臓の左右は正常だが、心臓が、右側にある場合は、右側の肺、肺動脈の低形成があったり、肺動脈の走行が普通と違う場合などがあります。
4)心臓の欠損孔以外に大きな異常が無く、心室の孔を塞ぐ手術が成功して、完全に穴をふさげている場合は、再度、手術を行う可能性は非常に低いと考えられます。