AEDの心電図解析と無脈性心室頻拍の判断
2015年5月25日
AEDにおける心電図解析について教えてください。
AEDの心電図解析においては、VFと無脈性VTと判断した場合に電気ショックを適用と判断していると思います。
AEDは、脈の有無を判断できるのでしょうか。それとも、波形を覚え込ませ、有脈か無脈かは関係なくVTを判断しているのでしょうか。
AEDの心電図解析においては、VFと無脈性VTと判断した場合に電気ショックを適用と判断していると思います。
AEDは、脈の有無を判断できるのでしょうか。それとも、波形を覚え込ませ、有脈か無脈かは関係なくVTを判断しているのでしょうか。
回答
鋭いご指摘です。しかも当然の疑問だろうと思います。
VFでは必ず無脈になりますが、VTでは脈が触れる場合と、触れない場合とがあります。といってもVTの場合、無脈か有脈かは連続した概念であり、触れ方によって、あるいはどこの血管で診ているかによっても異なってきます。最初は触れていたければ段々触れなくなる、ということもあります。
触れる触れないの根本的な違いはVT中の血圧によるわけですが、いくつ以下を無脈とする、といった規定はありません。
一般にVTの心拍レートが速ければ速いほど血圧は低下します。
また器質的な心疾患、とくに心室の収縮障害が強い例(広範な心筋梗塞や拡張型心筋症)が背景に存在すれば、心拍レートがそれほど速くなくても血圧が低下することがあります。
さらにはVTの起源が、どこにあるかによって心室の収縮が不均一に行われて(非同期的収縮)、やはり血圧が低下することもあります。
血圧が低下すればするほど患者は危険状態にあると考えられ、またVFに移行する可能性も増えますので、迅速な治療が望まれます。
無脈であろうと有脈であろうと、VTであれば電気ショックを加えれば高い確率でそれを停止することができます。無脈の場合は患者の意識が低下しているので、麻酔をかけずに電気ショックをかけても患者の苦痛はありませんが、有脈で患者の意識があると、これは苦痛です。
AEDは素人が使うことを想定していますが、その素人から苦痛を受けるようなことは(たとえ治療とはいえ)受け入れがたいことです。当然、救助者にとっても意識のある赤の他人に危害を加えることは避けたいことですし、場合によっては犯罪行為とみなされてはたまりません。ですので倒れた人の意識がないことがAED使用の大前提になります。VTの場合には無脈=意識がない、という意味になります。
VTであっても有脈の場合には、そのまますぐに死に至る可能性は低く、救急隊が来るのを待ってから、さらには病院に搬送してから治療を受けるやり方でも、十分間に合う可能性が高いと考えられます。もちろん途中から無脈になったり、VFに移行することもありますが、その場合には患者の反応がなくなりますから、その時点でAEDの診断に従えば良いと言うことになります。そのような理由からAEDの対象とすべきは〔理屈上は)無脈性のVT/VFということになります。
さて、ご質問の答えですが、AEDの機械に自動的に脈を検知する機能は備わっていません。無脈であると胸を張って言えるAEDはありません。
ですがAEDはVTの心拍レートがどのくらいあるかは見ていて、それが遅い場合には電気ショックをアドバイスしません。またVTの波形も分析していて、例えばQRSの幅が狭い場合には上室性頻拍の可能性を疑ったり、VTであっても心室中隔付近から興奮が始まっており、しかも心筋に大きな傷害がないと推察されるので、その場合も電気ショックを勧めないことが多いです。これらの判断はAEDのメーカー、機種によっても違います。いずれにしてもこのような方法を採用しているため、VTが有脈か無脈かの診断能力には限界があり、中には誤診断もわずかですがあります。ただどちらかというと有脈を間違えることはあっても無脈は見落とさないように工夫されています。
そこでAEDの使用にあたって重要なことは人の診断を付加することです。つまり、患者の意識がない、呼吸がない、という判断が付け加えられれば、まず脈もないだろう、という類推です。これをもって無脈としているわけです。素人に脈を診ろ、ということは(間違えのもとですので)勧めず、意識と呼吸でその判断をしてもらっているわけです。それとAEDの診断とを組み合わせて最終的に電気ショックを加えるかどうかが判断される、ということです。
やや特殊ですが、病院の中などで麻酔下に人工呼吸器につながれているような場面では、意識も自発呼吸もないので、この方法が通用しないことになります。ですが病院であれば心電図モニターがあり、あるいは血圧を確認できるので、大きな問題はないはずです。
AEDが採用しているのは、あくまで素人が病院外で使うことを前提に作られた診断機能ということになります。
ただ今後についてはいろいろと期待はあります。
例えば今でもApple watchを身につけていれば自分の心拍数を測ることができますが、それが検知不能になっていることを第三者が知ることができれば、無脈の可能性を推測できます。もちろんまだまだそれを心停止の判定に使えるほどの信頼度はありませんが。
それでも将来的には技術の進歩に伴って無脈か有脈かをもっと高い精度で判定できる方法が確立される可能性はあると信じています。
VFでは必ず無脈になりますが、VTでは脈が触れる場合と、触れない場合とがあります。といってもVTの場合、無脈か有脈かは連続した概念であり、触れ方によって、あるいはどこの血管で診ているかによっても異なってきます。最初は触れていたければ段々触れなくなる、ということもあります。
触れる触れないの根本的な違いはVT中の血圧によるわけですが、いくつ以下を無脈とする、といった規定はありません。
一般にVTの心拍レートが速ければ速いほど血圧は低下します。
また器質的な心疾患、とくに心室の収縮障害が強い例(広範な心筋梗塞や拡張型心筋症)が背景に存在すれば、心拍レートがそれほど速くなくても血圧が低下することがあります。
さらにはVTの起源が、どこにあるかによって心室の収縮が不均一に行われて(非同期的収縮)、やはり血圧が低下することもあります。
血圧が低下すればするほど患者は危険状態にあると考えられ、またVFに移行する可能性も増えますので、迅速な治療が望まれます。
無脈であろうと有脈であろうと、VTであれば電気ショックを加えれば高い確率でそれを停止することができます。無脈の場合は患者の意識が低下しているので、麻酔をかけずに電気ショックをかけても患者の苦痛はありませんが、有脈で患者の意識があると、これは苦痛です。
AEDは素人が使うことを想定していますが、その素人から苦痛を受けるようなことは(たとえ治療とはいえ)受け入れがたいことです。当然、救助者にとっても意識のある赤の他人に危害を加えることは避けたいことですし、場合によっては犯罪行為とみなされてはたまりません。ですので倒れた人の意識がないことがAED使用の大前提になります。VTの場合には無脈=意識がない、という意味になります。
VTであっても有脈の場合には、そのまますぐに死に至る可能性は低く、救急隊が来るのを待ってから、さらには病院に搬送してから治療を受けるやり方でも、十分間に合う可能性が高いと考えられます。もちろん途中から無脈になったり、VFに移行することもありますが、その場合には患者の反応がなくなりますから、その時点でAEDの診断に従えば良いと言うことになります。そのような理由からAEDの対象とすべきは〔理屈上は)無脈性のVT/VFということになります。
さて、ご質問の答えですが、AEDの機械に自動的に脈を検知する機能は備わっていません。無脈であると胸を張って言えるAEDはありません。
ですがAEDはVTの心拍レートがどのくらいあるかは見ていて、それが遅い場合には電気ショックをアドバイスしません。またVTの波形も分析していて、例えばQRSの幅が狭い場合には上室性頻拍の可能性を疑ったり、VTであっても心室中隔付近から興奮が始まっており、しかも心筋に大きな傷害がないと推察されるので、その場合も電気ショックを勧めないことが多いです。これらの判断はAEDのメーカー、機種によっても違います。いずれにしてもこのような方法を採用しているため、VTが有脈か無脈かの診断能力には限界があり、中には誤診断もわずかですがあります。ただどちらかというと有脈を間違えることはあっても無脈は見落とさないように工夫されています。
そこでAEDの使用にあたって重要なことは人の診断を付加することです。つまり、患者の意識がない、呼吸がない、という判断が付け加えられれば、まず脈もないだろう、という類推です。これをもって無脈としているわけです。素人に脈を診ろ、ということは(間違えのもとですので)勧めず、意識と呼吸でその判断をしてもらっているわけです。それとAEDの診断とを組み合わせて最終的に電気ショックを加えるかどうかが判断される、ということです。
やや特殊ですが、病院の中などで麻酔下に人工呼吸器につながれているような場面では、意識も自発呼吸もないので、この方法が通用しないことになります。ですが病院であれば心電図モニターがあり、あるいは血圧を確認できるので、大きな問題はないはずです。
AEDが採用しているのは、あくまで素人が病院外で使うことを前提に作られた診断機能ということになります。
ただ今後についてはいろいろと期待はあります。
例えば今でもApple watchを身につけていれば自分の心拍数を測ることができますが、それが検知不能になっていることを第三者が知ることができれば、無脈の可能性を推測できます。もちろんまだまだそれを心停止の判定に使えるほどの信頼度はありませんが。
それでも将来的には技術の進歩に伴って無脈か有脈かをもっと高い精度で判定できる方法が確立される可能性はあると信じています。