慢性心不全の生活管理
心不全の患者さんは、薬物療法に加えて日常の生活管理がとくに重要です。心不全の悪化の原因はさまざまですが、その原因の多くは患者さんのちょっとした心がけで回避することができます。生活習慣を変えるためには、本人の自覚もちろん大切ですが、高齢者の場合、家族や周囲の人の協力も不可欠です。慢性心不全患者さんが気をつけるべき食事と運動のポイントを紹介しましょう。
食事療法で、一番重要となるのが食塩制限です。塩分の成分であるナトリウムは水を身体に溜め込む性質があり、摂り過ぎると血液量が増加して心臓に負担がかかります。軽症の人は、食塩摂取量を1日7g以下、重症の人は1日3g以下に制限するように努めましょう。難しそうに感じますが、減塩調味料を使う、味噌汁は1日1杯、漬物や佃煮を減らす、香辛料やレモンなどをうまく利用する、味をしみこませず表面につけるなど、味付けや調理法を工夫すれば、上手に減塩できます。
心不全の患者さんでは、水分の摂り過ぎにも注意が必要です。夏の暑い日に、水分を多く摂ることは必要ですが、度が過ぎると体液が増加し、心不全悪化の誘因となります。過度な飲酒や過食も心臓に負担をかけます。太っている場合は減量しましょう。
そのほか、気をつけるべき生活習慣として、タバコを吸っている人は、禁煙が絶対条件です。タバコは心臓だけでなく、肺にも悪影響を及ぼし、がんの原因にもなります。
また、長時間の入浴や熱いお風呂にも注意が必要です。入浴は血管が拡張して心臓が楽になる効果がありますが、長すぎたり熱すぎたりすると心臓に負担がかかります。お湯の温度は40℃くらいに調節し、水位は胸までの高さで、半身浴するようにしましょう。風呂場は、高齢者の心事故が起こりやすい場所のひとつです。脱衣所と浴室の温度差によって、心筋梗塞を起こすこともありますので、冬場は脱衣所を十分暖めておくなど、ちょっとした対処で事故を防ぎましょう。
高齢者はもともと心機能が低下しているため、風邪を引いたり、寝不足が続いたり、少しのストレスがかかっただけでも、心臓に負担がかかってしまいます。
できるだけ心臓に優しい生活を心がけるとともに、少しでも普段と違う症状があれば、念のため、病院できちんと調べてもらうようにしましょう。