心不全の予後はがんより悪い!?
心不全の「予後」とは、心不全になったあと、どれだけ長く生きられるか、という意味です。一般的に、心不全の予後はよくないとされ、重症化した心不全の予後は「がんより悪い」といわれることもあります。
心不全の予後は、その根底にある心臓病の種類、症状の重症度によっても変わってきます。心不全の重症度を判断するには、ニューヨーク心臓協会(New York Heart Association:NYHA)の分類がよく用いられます(図16)。Ⅰ度、Ⅱ度、Ⅲ度、Ⅳ度と数字が大きくなるにしたがって、難治性の心不全であることを意味し、予後も悪くなっていきます。
重症のⅣ度は安静にしていても、動悸や息切れが起こるようになってしまった状態です。Ⅳ度まで重症化してしまった患者さんでは、適切な治療を受けなければ、2年以内に50%が亡くなるといわれています。
また、心不全全体の年間死亡率は7~8%ですが、Ⅲ度、Ⅳ度になると死亡率は相対的に高くなり、Ⅲ度では20~30%になるといわれています。このように、心不全になっても長く生きるためには、できるだけⅠ、Ⅱ度の状態にとどめておく必要があり、軽症のうちからしっかりと治療することが大切です。
死亡率の問題もそうですが、高齢者の心不全でさらに深刻なのが、再入院の問題です。高齢者では、心不全を起こして入院するたびに全身状態が1段階ずつ低下し、入院前の状態にまで回復することはありません。慢性的に心不全を繰り返すようになると、何らかの原因で急激に悪化(急性増悪)して入院、十分に回復しないまま退院、そして再入院・・・ということを繰り返し、徐々に悪化していくという傾向に歯止めがかからなくなります(図17)。
注目すべきは再入院の原因です。「塩分・水分制限の不徹底」「過労」「治療薬服用の不徹底」などが上位を占めていますが、これらはすべて患者さんご自身の問題ともいえます(図18)。つまり、毎日生活のなかで、「塩分を控える」「水分を摂り過ぎない」「疲れをためない」「確実に薬を飲む」といったちょっとしたことに注意すれば、再入院を防ぐことができます。「自己管理によって、心不全の予後は改善する」ということをぜひ覚えておいてください。