超高齢社会で急増する心不全
近年、生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)の増加や高齢化による高血圧や弁膜症の増加などにより、心不全の患者さんが急増しています。
社会の高齢化に伴い、高齢者の心不全が増えています。
息切れや動悸などの症状があっても「年のせい」と思い込んで、そのままにしていませんか?
2017年11月掲載(2023年8月一部改訂)
社会の高齢化に伴い、高齢者の心不全が増えています。息切れや動悸などの症状があっても「年のせい」と思い込んで、そのままにしていませんか?
監修:百村 伸一 先生 さいたま市民医療センター病院長
※『高齢者の心不全』の記事中では、「収縮機能の低下した心不全」(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)を「収縮不全」、「収縮機能が保たれた心不全」(heart failure with preserved ejection function:HFpEF)を「拡張不全」という表記で統一しています。
近年、生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)の増加や高齢化による高血圧や弁膜症の増加などにより、心不全の患者さんが急増しています。
死亡原因としてよく目にする「心不全」は、病気の名前ではありません。心不全とは、心臓に何らかの異常があり、心臓のポンプ機能が低下して、全身の臓器が必要とする血液を十分に送り出せなくなった状態をいいます。
心臓には、血液を循環させるための二つの機能があります。全身へ血液を送り出すための「収縮機能」と、全身から戻ってきた血液を取り込むための「拡張機能」です。
年をとると、休みなく働き続けてきた心臓の機能が衰えて、息切れや疲労感などの症状が現れるようになります。
心臓の周りには、心臓の筋肉(心筋)に酸素や栄養を送っている冠動脈という太い血管があります。この血管の内側に、コレステロールなどが溜まって血液の通り道が狭くなることを動脈硬化といいます。
弁膜症は、弁の異常による病気の総称で、弁の開きが悪くなって血液が流れにくくなる「狭窄症」、弁がうまく閉まらず、血液が逆流する「閉鎖不全症」があります。
一口に「不整脈」といっても、脈が速くなるタイプの頻脈性不整脈、遅くなるタイプの徐脈性不整脈があり、さらにそれぞれに様々な不整脈がありますが、すべてが危険なものではありません。
心筋炎や心筋症は、心臓の筋肉(心筋)が障害されることで、心臓のポンプとしての機能が低下する病気の総称です。
高齢者の心不全は、症状がはっきり現れないことも多く、症状があっても「年のせい」と思い込み、放置していることが少なくありません。
心不全かどうかを診断するためには、まず、息切れや動悸といった心不全特有の症状があるか問診を行い、さらに、聴診、胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査などのさまざまな検査を行って、総合的に判断します。
心不全の「予後」とは、心不全になったあと、どれだけ長く生きられるか、という意味です。一般的に、心不全の予後はよくないとされ、重症化した心不全の予後は「がんより悪い」といわれることもあります。
薬物治療(薬による治療)は、心不全治療の基本となるものです。心不全の薬物治療の目的は大きく分けて二つあります。
心不全の患者さんは、薬物療法に加えて日常の生活管理がとくに重要です。心不全の悪化の原因はさまざまですが、その原因の多くは患者さんのちょっとした心がけで回避することができます。
以前は、心臓病のある人は、安静第一で、運動は避けるべきだと考えられていました。最近では、心臓病には運動は欠かせないものとなっており、心不全後の患者さんにもさまざまな「心臓リハビリテーション」が行われるようになっています。