AEDの設置基準の条件
日本循環器学会AED検討委員会
日本心臓財団
日本循環器学会AED検討委員会と日本心臓財団は、自動体外式除細動器(AED)の設置および配置について、具体的な目安を示すことにより、効果的かつ効率的なAEDの設置を促し、心臓突然死の減少につなげるため、本提言を「心臓」(Vol.44, No.4, 2012, 発行:日本心臓財団、日本循環器学会)に発表しました。 ここでは、その概要を紹介いたします。
*AEDの具体的設置・配置基準に関する提言(「心臓」掲載全文:PDF)
なお、本提言をベースに一般財団法人救急医療財団より「AEDの適正配置に関するガイドライン」が発表されました(平成25年発表。平成30年12月補訂版発表)。はじめに―AEDの戦略的配置に向けて
日本循環器学会AED検討委員会委員長 三田村秀雄
日本で院外心臓突然死に陥る人の数は毎年およそ6万人とされる。空しいかな、その予知や予防には限界がある。頼みの救急車にしても、現場到着は通報から平均8分後と遅過ぎる。ところが一つの器械の出現により、救命が現実のものとなりつつある。AEDである。
2010年の1年間に、目撃された心原性心停止に対して現場のAEDが使われた数は667件にのぼる。それだけでも驚きであるが、何とその45%が救命されたのだ(図1)。
見落としてならないのは同じ2010年に目撃された心原性心停止の総数が22,463件もあり、その内AEDが使用されたのはたったの3%だったことである。残り97%はAEDによる恩恵に与れなかった。何故なのか?
AEDの絶対数がまだまだ足りないこともある。しかし地域のAED配備基準に一貫性がない、設置場所が市民に周知されていない、施設の広さに見合った必要台数が確保されていない、など設置に関する政策や計画性の欠如も看過できない。
2011年8月、サッカーの元日本代表、松田直樹選手が松本市の公園グランドで練習中に心室細動で倒れ、不帰の人となった。このとき、現場にいた2人の同僚が公園の管理事務所に走ったが、そこにAEDはなかった。実は彼らがいつも練習していた市営サッカー場にはAEDがあったが、当日はそこで少年試合が開催されたので場所を変更したという。運が悪かったとしか言いようがないが、そんな偶然によって生死が左右されていいはずがない。
日本循環器学会AED検討委員会では、こうした無秩序なAED配備状況を改善するため、欧米における配置状況や、日本国内で集積された消防庁データをもとに、戦略的で効果的なAED設置のあり方を検討してきた。ここにその内容を公開し、AEDを地域に展開しようとしている自治体や、導入を検討している民間に向けて、AEDの具体的設置・配置基準を広く提言させていただいた。この提言が今後、日本の各所でAED設置を進める上で参考指針となり、ひいてはAEDの効率的な活用、そして救命率の改善につながることを願うものである。
AEDの具体的設置・配置基準に関する報告
AEDの設置および配置について具体的な目安を示すことで、効果的かつ効率的なAEDの設置を促し、心臓突然死の減少につなげることを目的とする。 以下に、設置が勧められる場所・施設と、施設内で配置にあたって考慮すべきことを表に示す。
*表中のクラス分類は、クラスI:有用・有効であることが照明されているか、見解が広く一致しているもの、クラスIIa:エビデンス・見解から有用・有効である可能性が高いもの。
300mごとにAEDが設置されていると、150m/分で早足で取りに行けば、その間のどこからでも1分以内でAEDが届き、5分以内に除細動が可能となる。
AEDを活かし、救命するために必要なこと
~AEDを用いた救命処置を学ぼう~
PUSHプロジェクト運営委員会委員長 石見 拓
AEDを設置するだけでは、突然心停止となった方を救命することはできません。設置されたAEDをきちんと維持管理し、いつでも使えるようにしておくこと、AEDの設置場所を周知することも大切です。そして一番重要なことが、AEDを使える人を増やすことです。
これまで、心肺蘇生は口をつけて息を吹き込む人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)の組み合わせとして広がってきましたが、近年、日本をはじめとしたいくつかの臨床研究により、胸骨圧迫のみの心肺蘇生が、人工呼吸も行う心肺蘇生と同程度に病院外での心停止患者を救命する効果を有することが明らかにされました。
胸骨圧迫のみの心肺蘇生であれば、一般の人でも簡単で覚えやすい上に、人工呼吸がないために心肺蘇生実施への抵抗が減り、救命現場に遭遇した際、救命処置に参加しようとする人が増えることが期待されます。
日本循環器学会では、胸骨圧迫とAEDの使用法に簡略化した蘇生訓練であるコール&プッシュの普及,啓発を通じて、AEDが有効に機能し、心停止例の救命率を向上させることを目指しています。
その実践のひとつとして日本心臓財団では、NPO大阪ライフサポート協会とともに、短時間で胸骨圧迫とAEDの使い方を効率よく学ぶ講習会を拡げるPUSHプロジェクトを展開しています。
心臓突然死は、いつ、どこで、誰に起こってもおかしくありません。いざという時に、設置が広がりつつあるAEDを使って救命処置ができるように。あなたも、AEDを用いた救命処置を学んでみませんか?
※AEDを用いた救命処置訓練が行われることが望ましいですが、講習会を受講していなくてもAEDを使えることも報告されています。訓練なしでもAEDの使用は制限されるべきではありません。