メディアワークショップ

一般市民の皆さんに対する心臓病を制圧するため情報発信、啓発活動を目的に、
情報発信能力の高い、メディアの方々を対象にしたワークショップを開催しております。

第6回日本心臓財団メディアワークショップ「不整脈の薬物治療に未来はあるか」

合併症で脳梗塞を起こす発作

会場 発作性心房細動は、合併症で脳梗塞を起こす心配はないのでしょうか?
岩永 発作性心房細動も持続時間によっては脳梗塞を起こします。およそ48時間続くと、心房内に血栓ができ脳梗塞の危険性が急に上がります。したがって早く診断をしなければならないので、少なくとも24時間以内には医療機関を受診してほしいと思います。

遺伝は心房細動のリスクファクター

会場 心臓は非常に遺伝に依存する臓器だといわれていますが、心房細動においても遺伝はリスクファクターのひとつと考えるべきでしょうか?
山下 その通りです。心房細動には遺伝性のものと、高血圧などと同様、多くの遺伝子の相互作用による「多因子遺伝」のものがあります。前者は、数は非常に少ないですが子供のときから症状が現れます。後者は、かなりポピュラーなものです。ただ、原因遺伝子自体が、同定されているのが1種類しかありません。心房細動の原因となる遺伝子の同定も将来の課題だと思います。

薬物治療からカテーテルアブレーションへの境界線

会場 薬物治療からカテーテルアブレーションへ移行する境目をどのようにお考えでしょうか? また、カテーテルアブレーションの治療適用についても教えて下さい。
沖重 カテーテルアブレーションに移行する境目は、医師や施設によって異なります。適用も、カテーテルアブレーションが実施され始めた当初と現在では異なります。当初は、安全性が十分ではなかったので、薬物治療が効かない人を対象としていました。最近は、安全性の確保や治験の集積などから、不整脈の種類によりますが、薬物治療をあまりせずにアブレーション治療に進む施設も多いようです。  私の場合は、若くて先天性の不整脈の方には、まず抗不整脈薬を処方します。しかし、抗不整脈薬のほとんどは胎児への安全性が確認されていないので、若い女性の場合には妊娠を考慮して、薬物治療ではなくカテーテルアブレーションを勧める場合があります。後天的な場合は、複数の薬を処方しても効果が得られなければ、患者の理解を得た上でカテーテルアブレーションに移行します。心房細動についても、症候性のもので非常に強い症状を訴え、抗不整脈薬も効かない場合には十分な説明をした上で勧めています。

日本のメガトライアル「J-RHYTHM」

会場 不整脈治療ガイドラインの現状は、どのようになっているのでしょうか?
小川 日本循環器学会が、薬物治療も非薬物療法もガイドラインをつくっていますが、残念ながら、日本にはその元になるエビデンスがなく、欧米のメガトライアルに基づいたガイドラインになっているのが現状です。したがって、若干日本の現状にそぐわない可能性があります。ただし、現在行われている日本国内でのメガトライアルJ-RHYTHM試験の結果が出れば、より患者さんの役に立つ実践的なガイドラインになると思います。
山下 J-RHYTHM試験の登録は終わっており、1,080例の心房細動患者が登録されています。脳梗塞や死亡、QOLをみる試験で、現在経過を観察中です。2006年度の12月にすべてのフォローアップを終了して、そこからデータを集めて解析する予定です*。  その他、心房細動に関連した試験ではJ-TRACE試験があります。これは、日本人を対象とした疫学調査のようなもので、患者さんが約1,000例登録されています。
小川 J-RHYTHM試験は、データ管理を独立したところで行っていますので、我々は途中のデータを見ることはできません。ただ日本の不整脈治療は欧米に比べて、非常にきめ細かく治療をする良い面がありますから、欧米のデータとは違う結果が出る可能性もあるのではないかと思っています。

*J-RHYTHM試験: 発言内容は、本ワークショップ開催当時(2005年12月6日)のものです。J-RHYTHM試験は2006年12月にフォローアップを終了する予定でしたが、2006年3月に効果・安全性委員会により早期終了の勧告が出され、2006年4月3日をもって早期終了となりました。

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