心房中隔欠損症の外科手術とカテーテル治療について教えてください。
主治医の先生から、もう少し大きくなってから、カテーテル治療と外科手術のどちらかを受けたほうがよいと言われました。リスクはどのくらいあるのでしょうか。
回答
心房中隔欠損の閉鎖治療は、
1)肺に流れる血流量と全身に流れる血流量の比が1.5倍以上、
2)右室/右房の拡大がある、
3)肺高血圧を合併していない
という場合に適応となります。
発育が順調ならば、3~5才前後で通常治療することが多い病気です。
治療の方法は、外科手術、内視鏡による手術、カテーテルによる治療などがありますが、一般的には外科手術かカテーテル治療が行われます。
カテーテル治療は、2枚の形状記憶合金(ニッケルとチタンの合金)の円盤がくっついた形の閉鎖栓とよばれる器具で心房中隔を挟み込むようにして欠損孔を閉鎖する治療です。おおよそ体重が15キロ前後で、心房中隔欠損の周りの中隔の壁の長さ(辺縁とよびます)が5ミリ以上(大動脈側以外)ある場合に適応となります。したがって、欠損孔の周囲に閉鎖栓を支持するだけの十分な辺縁がないか、または閉鎖栓の大きさが心房中隔の全体の長さよりも大きくなるようなおおきな欠損孔の場合、さらに肺静脈還流異常や僧帽弁閉鎖不全などの外科的な修復を必要とする合併異常がある場合は、カテーテル治療の対象になりません。
カテーテル治療の治療時間は全身麻酔を含めて約2時間程度です。現在年間1,100ー1200例程度の治療が日本で行われています。
カテーテル治療の合併症は、カテーテル操作による出血や血栓、不整脈に加え、閉鎖栓の脱落(現在までに約40例程度の報告があります)があります。 また、心房壁や大動脈に小さな穴が空いて心臓の外の心膜腔というところに出血する例が0.23%程度あると報告されています。この場合は、緊急の外科手術が必要になることもあります。
一方、外科手術は体重が小さくても治療が可能です。人工心肺というポンプの装置を使って手術が行われます。 まず開胸し、人工心肺を使用して心臓を止めてから、心房中隔の穴を直接またはパッチという布を用いて閉鎖します。手術のためには、開胸するので、胸には、皮膚に手術創が残ります。リスクとしては、出血、血栓、不整脈、腎機能障害、細菌の感染症、神経障害などがあげられます。症例数があり、心臓手術に熟練した施設であれば、基本的には安全な手術で、ほとんどの例で合併症を生じることはありません。 ただし、出血や血栓などで重症となった場合は、死に至るリスクもあります。
お子さんの場合は、今現在症状がなく経過観察可能な状況と思われます。主治医の先生がもう少し大きくなってから治療を受けたほうがよいと言われたのは、カテーテル治療や外科手術の適切な時期を考えていわれたのだと思います。
体重10キロ以上か、または 体重15キロ前後まで発育を待ってカテーテル治療か、あるいは外科治療になるか、上記のことを踏まえて主治医の先生ともよく相談されて方針を決められればと思います。