疾患別解説

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頻拍性不整脈(上室頻拍、心室頻拍)とは

上室頻拍

 脈が速くなる頻脈性不整脈のうち、主に房室結節を含む房室接合部に原因があるものを上室頻拍といいます。突然始まって突然止まる動悸の発作として現れ、脈拍は150~200/分ほどになります。息こらえなどによって自然に止まることもありますが、薬で止めることが必要な場合もあります。大きく分けて、房室結節内で電気がぐるぐる回るリエントリーという現象によるものと、WPW症候群でバイパスとの間で興奮が旋回することによるものの2種類がありますが、いずれもアブレーション治療による根治が可能です。

上室頻脈.png

上室頻拍の心電図(突然心拍数150/分を超える頻脈を呈した)

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心室頻拍

 一方、心室から始まる頻拍発作は心室頻拍と呼ばれます。心拍数は100~200/分になり、心室から血液を十分に送り出すことができなくなるために急激に血圧が下がり、致命的な心室細動に移行する恐れがありますので、直流通電(カウンターショック)などで大至急頻拍を停止させる必要があります(持続性心室頻拍の図)。

 心室頻拍の特殊な形として、「トルサード・ド・ポアンツ」と呼ばれるものがあります。フランス語の論文として最初に報告されたことから世界的にフランス語の名前が使われていますが、トルサードは「ねじれている」という意味、ポアンツは「尖端」という意味で、心電図上、尖った部分が刻々と変化し、基線を中心にしてだんだんねじれていくように見えることから名付けられました。しばしば心電図のQT時間が延長している例で発生し、突然死を起こすこともある重症不整脈です。さまざまな薬剤の副作用として発生するという報告が相次ぎ、広く注意が喚起されています。(トルサード・ド・ポアンツの図)

 いろいろな頻脈性不整脈に対して、不整脈の発生源を高周波電流や冷凍凝固法によって治療するカテーテルアブレーション法が近年、急速に進歩してきています。上室頻拍や心房粗動に加え心房細動に対しても多くはこの方法で根絶することができるようになりましたが、心室頻拍にはその効果を期待できないものもあり、薬剤や手術などを含めさまざまな治療法が用いられます。

トルサード.png

監修:加藤貴雄(東武鉄道(株)診療所所長/日本医科大学名誉教授)  更新:2022年3月

妊娠と期外収縮、小学校の心電図検診でQS型といわれた、不整脈と弁膜症で心不全に、狭心症の疑いなど、日本心臓財団は7,500件以上のご相談にお答えしてきました。

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