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循環器病治療の最新情報2016

Part Ⅲ 肺高血圧症
慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の外科治療

講演内容

 最初に小泉氏は、慢性血栓塞栓性肺高血圧症(chronic thromboembolic pulmonary hypertension: CTEPH)に対する外科手術である肺動脈内膜摘除術(pulmonary endarterectomy: PEA)の歴史を概観した。同氏によればPEAは1948年に始まり、当初は肺動脈血栓内膜摘除術(pulmonary thromboendarterectomy: PTE)と呼ばれていたが、2003年の肺高血圧症ワールド・シンポジウム(ベニス会議)以降はPEAと呼ばれるようになった ※1。同氏は、PEAによる摘出標本も示した(図1)。

図1 肺動脈内膜摘除術(PEA)による摘出標本

図1 肺動脈内膜摘除術(PEA)による摘出標本
(提供:小泉信達氏)

 2003年、カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のJamiesonらが1,500例を対象としたPEAの成績を報告したが(死亡率5%)、この時にPEAの術式が現状のようにほぼ確立されたという(Jamieson SW et al. Ann Thorac Surg 2003)。一昨年1月、小泉氏が同校を訪れた際には既に3,200例を越えており、安定した治療成績が維持されていたという。

肺動脈内膜摘除術(PEA)の適応

 同氏は、CTEPHに対するPEAの適応について話を進めた。CTEPHに対するPEAの適応は、前述のJamiesonらのUCSDのものが広く使われてきた。その内容は次のごとくである(Jamieson SW et al.J Thorac Cardiovasc Surg 1993)。

  • 重症肺高血圧(平均肺動脈圧:mPAP≧30mmHg、肺血管抵抗:PVR≧300dyne・sec・cm-5
  • NYHA心機能分類(WHO肺高血圧症機能分類) ※2≧Ⅲ
  • 外科的に到達可能な肺動脈病変:主肺動脈~区域・亜区域動脈まで
  • 有意な合併疾患(呼吸器疾患を含む)を伴わない

「もう20年以上前の論文によるものだが、我々はこれをベースにしながら治療方針を立てている」(小泉氏)。

続いて小泉氏は、摘除血栓内膜の病理所見からJamiesonらは、肺動脈の閉塞形態を4型に分類していることを紹介した ※3。その後、さらに詳細な手術分類(レベルによる分類)もUCSDから提唱されているという。

慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の画像診断をめぐって

 しかし同氏によれば、こうしたUCSD分類は手術時分類であり、CTEPHの病型分類ではない。術前の画像診断では、中枢型か末梢型かを明確に分類できない点に問題があるという。「造影CTで中枢側血栓は描出されるが、内膜肥厚は評価困難。また造影CTで血栓がなければ“末梢型”とする傾向がある」と指摘し、「造影CTでみるとCTEPHには中枢側血栓を認めないⅡ型(内膜肥厚のみ)が比較的多い」ともいう。一方、肺動脈造影は侵襲的検査であり、読影にも経験が必要だが、「どの病変のどの程度の病変があるかが良く分かる」という。

 さらに、「確立した画像診断分類の欠如が、治療選択にバラツキを与えており、中枢型ではないと診断することで、バルーン肺動脈形成術(BPA)が広く行われてしまう懸念がある。また、手術適応がないとの診断から、薬物治療に留まってしまう症例が出てくるリスクもある」と話す。

 続いて、胸部造影CT、肺動脈造影(PAG)などの画像を示し、「造影CTで主肺動脈などに壁在血栓が認められれば中枢型であることは明らかだ(図2)。PAGでは壁の不整・肥厚などが認められる(図3)。しかし、実際に摘除した血栓をみると薄いものも多く、PAGで壁の不整・肥厚などを認めても、こうした薄い血栓は造影CTではっきり血栓として認められないことが多い」と話す。胸部造影CTやPAGでCTEPHは、①webs and bands(帯状狭窄)、②pouching defects(小袋状変化)、③intimal irregularities、④ abrupt vascular narrowing、⑤complete vascular obstructionなどの特徴的所見を有するという。

図2 CTEPH(中枢型)の胸部造影CT所見

図2 CTEPH(中枢型)の胸部造影CT所見
(提供:小泉信達氏)

図3 CTEPH(中枢型)の肺動脈造影(PAG)所見

図3 CTEPH(中枢型)の肺動脈造影(PAG)所見
(壁の不整、途絶、肺動脈本幹の拡張、などを認める:矢印)
(提供:小泉信達氏)

 小泉氏らは、画像診断に際して造影CT、PAGに加えてfusion CTも使用している。fusion CTは、肺血流シンチグラムをカラー化してCT画像に重ね合わせたもので、「術前にfusion CTで評価することにより、どの区域がどのレベルで閉塞しているかが分かる」という(図4)。

図4 CTEPH(中枢型)の肺血流シンチとのfusion CT所見

図4 CTEPH(中枢型)の肺血流シンチとのfusion CT所見
(右側肺全域および左中葉に高度の欠損を認める:カラーの入っていない部分)
(提供:小泉信達氏)

肺動脈内膜摘除術(PEA)の術式

 小泉氏はPEAの術式も紹介した。それによればPEAは、①胸骨正中切開、②完全体外循環と全身冷却(中枢温18℃)、③左右主肺動脈切開、④15分間の間歇的循環停止+10分間の再灌流、という術式で行われる。「まず上大静脈と上行大動脈の間にある右肺動脈を切開して、内側の内膜を切除する。次に上行大動脈の左側にある左肺動脈を切開して内膜を切除する」(小泉氏)。切除には専用の内膜剥離子(Jamieson剥離子)が使われる。

肺動脈内膜摘除術(PEA)の治療成績(東京医科大学病院)

 続いて小泉氏は、東京医科大学病院におけるPEAの治療成績について紹介した。同病院では2012年にPEAを導入したが、2012年1月~2016年8月までの間に、48例にPEAを実施した。患者背景は平均年齢60.9歳、女性32例(67%)、平均罹患期間22カ月、血液凝固異常11例(23%)、mPAP40.2mmHg、PVR≧763.3dyne・sec・cm-5だった。手術時間は480.5±117.9分、人工心肺時間は270.6±62.1分、循環停止は52.3±18.1分で、Central ECMO(開胸下体外式膜型人工肺)+IABP(大動脈内バルーンパンピング)を4例に実施した(全例離脱)。同時手術としてPFO(卵円孔開存)閉鎖術6例(12.5%)、三尖弁輪縫縮術(TAP)3例(6.3%)、僧帽弁形成術(MVP)+TAP+Maze手術(心房細動手術)を1例(2.1%)、冠動脈バイパス術(CABG)を4例(8.3%)、大動脈弁置換術(AVR、弁輪拡大術)を1例(2.1%)に行った。入院死亡はMVP+TAP+Maze手術を行った1例(2.1%)のみだった(遠隔成績は、図7を参照されたい)。

 Central ECMO の適応は、遺残肺高血圧のため人工心肺離脱困難な症例、肺出血、低左心機能であり、IABP追加は、冠灌流上昇による循環動態の安定、拍動流による臓器灌流の増加、Central ECMO離脱時の体血圧の維持、などが目的だったという。

 mPAPは術前40.2±9.6mmHgから術後21.1±9.1mmHgへと有意に減少し、PVRも術前763.3±435.0dyne・sec・cm-5から術後259.5±172.3dyne・sec・cm-5へと有意に減少した(いずれもP<0.0001)。「この数字から、手術にはかなりの効果があることが分かってもらえると思う」(小泉氏)。

 同氏は末梢型(UCSD手術分類Ⅲ型)の症例を紹介した。同症例は肺動脈中枢側に血栓はなく、末梢に肥厚した内膜が認められた。術前の肺血流シンチグラムでも末梢に欠損像が認められていた。「中枢型では通常、血栓は連なって取れるが、この症例は末梢型のためちぎれながら取れた」という。同症例のmPAPは術前47mmHgから術後17mmHgへ、PVRは術前1756.2dyne・sec・cm-5から術後407.6dyne・sec・cm-5へと減少した。心拍出量は術前2.05L/minから術後3.14L/minへと増加した。「術後の経過も良好だった」という。

 なお症例の中には、前述のJamiesonらのPEA適応にはずれた、mPAP<30mmHgが5例、PVR<300dyne・sec・cm-5が2例含まれていたという。「これらの症例は、紹介元の前医での測定では、mPAP、PVRともにJamiesonらの適応を満たしていたが、その後の可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激剤リオシグアト(商品名アデムパス)投与などによりこのような改善が得られていた」と同氏は説明している。

 同氏によれば、Central ECMO+IABPを実施した4例のmPAP、PVRは比較的高く、その4例のうち2例の手術内容を紹介。1例は35歳男性で、低左心機能(左室駆出率<30%)で肺空洞性病変を有するハイリスク例だった。術前のmPAPは48mmHg、PVRは1,010dyne・sec・cm-5だった。右肺動脈には器質化した血栓、肥厚した内膜が認められ、これを摘出した。右下葉にも病変があったが、そこには空洞性病変があったので、切除による喀血の危険性を考慮して右下葉病変はそのままにして手術を終えた。このため術後に肺高血圧が残存しCentral ECMO+IABPを施行した。術後のmPAPは39mmHg、PVRは418.4dyne・sec・cm-5だった。

 もう1例は72歳女性で、巨大肺動脈内血栓を認め、血管炎が疑われた症例で、重症の僧帽弁と三尖弁の閉鎖不全、心房細動を合併していた症例である。胸部X線では肺動脈の著明な拡大が認められた。PAGでは、肺動脈が著明に拡大し末梢は描出されなかった。造影CTでは肺動脈内に幾つかの巨大血栓が認められた。同症例にはPEAと同時に、MVP+TAP+Maze手術も行った。かなりの血栓を除去したが術後の遺残肺高血圧のためにCentral ECMO+IABPを施行した。ECMOとIABPは各々手術7病日後、16病日後に離脱できたが(気管切開を実施)、19病日後に敗血症を併発し、54病日後に入院死亡となった。

肺動脈内膜摘除術(PEA)の早期成績と今後の課題

 次に小泉氏はPEAの早期成績(入院死亡)について紹介した。同氏が提示した全14報告のうち、1993年のJamiesonら(UCSD)の成績(150例)では8.7%、 2003年のやはりJamiesonらの成績(500例)では4.4%、2006年の国立循環器病研究センター(当時)での荻野/安藤らの成績(88例)では8.0%、2012年のMadaniら(UCSD)の成績(500例)では2.2%、前述の東京医科大学病院における成績(48例)では2.1%などとなっていた。「入院死亡が次第に低下してきていることが分かる」と小泉氏。

 同氏は、我が国におけるPEAの成績の年次推移も紹介した(図5)。「我が国では全国合計でも年間40~50例ほどの手術数にとどまるが、やはり入院死亡は減りつつある」(小泉氏)。

図5 本邦におけるPEAの成績

図5 本邦におけるPEAの成績
╶╴「日本胸部外科学会年次報告」より作成╶╴
(提供:小泉信達氏)

手術死亡(術後30日死亡) / 入院死亡 / 生存

 小泉氏によれば、肺高血圧にまで到らない症候性の慢性肺血栓塞栓症(chronic thromboembolic disease:CTED)では、PEAの手術成績は特に良いようだ。2000年~2013年のPEA 1,019例中、mPAP<25mmHgの42例の予後を調べた英国のコホート研究では、入院死亡は無く平均入院期間は11日と短かったが、周術期主要合併症(何らかの理由によるオペ室への帰室など)が40%に起きたという。術後には症状やQOLは有意に改善されたが、遠隔死亡が2例あった(Taboada D et al. Eur Respir J 2014)。同論文の著者らによると、これらの患者は肺高血圧の定義を満たしていなかったが、症状やQOLの改善、病態の進展予防などの目的で早期PEAを実施したという。
 「PEAにおける手術成績の安定がCTEDに対する外科的介入も可能にしている状況が示されていて興味深い。しかし、遠隔死亡もあることから注意深いフォローアップが必要だ」(小泉氏)。

 小泉氏は、80歳台の高齢者(octogenarians)に対するPEAの成績も紹介した。1994年から2010年の間にUCSDでは1,547例のPEAが行われたが、そのうち28例(1.8%)がoctogenariansであり、30病日死亡率は14.2%とoctogenarians以外の4.2%より有意に高率だった(P=0.009)。しかし、術後7年間の追跡時点で52%が生存していた(Pretorius GD et al. 第5回肺高血圧症ワールドシンポジウム、2013年、ニース)。
「80歳台の高齢者でも手術に耐え得る状態ならば、手術を行った方が良いのではないかと思う」と小泉氏。「年齢別に検討した我々のデータでは、80歳以上だから手術によってECMOやIABPを必要とする事態になるわけではない」とも同氏は付け加えている。

 次に同氏は、内外のCTEPHガイドラインにおけるPEAの位置付けについて概観した。まず取り上げたのは第5回肺高血圧症ワールドシンポジウム(2013年、ニース)における「CTEPH治療アルゴリズム」だが、“CTEPHチームによるアセスメントで手術適応ならばPEA”とされ、手術非適応の場合は“経験あるセンターでのセカンドオピニオン”のもとで選択肢を考慮する流れになっている。この流れでは、標的薬物療法の次の段階として肺移植の照会、バルーン肺動脈形成術(経皮経管的肺動脈形成術:PTPAと表記されている。後述のBPAと同一)の2つの選択肢が示されているが、後者のPTPAには「?」が付されている(Kim NH,et al. J Am Coll Cardiol 2013)。

 一方、「2015ESC(欧州心臓病学会)/ERS(欧州呼吸器学会)肺高血圧症の診断と治療ガイドライン」では、“多くの専門領域からなるCTEPHチームによるアセスメントで、技術的に手術適応でリスク/ベネフィット比が許容できればPEA”とされている。また、“技術的に手術非適応ならば標的薬物療法と経験豊かなセンターでのバルーン肺動脈形成術(balloon pulmonary angioplasty: BPA)”の二つの流れが示されている(Eur Heart J 2016)。「BPAの成績の向上により、適応の位置付けも上がっている」と小泉氏。特に我が国におけるBPAの成績向上は目ざましいものがあるという。

 こうした状況を反映して、我が国の「肺高血圧症治療ガイドライン2012年改訂版」では既にPEAと同位置に“BPA適応検討”が挙げられている(図6)。国際的な視点からみると、日本ではBPAが盛んに行われていると思う」(小泉氏)。

図6 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療手順

図6 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)の治療手順

循環器病の診断と診療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)
肺高血圧症治療ガイドライン2012年改訂版
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nakanishi_h.pdf
(2017年8月閲覧)より引用

Ⅰ-C:勧告の程度はClass Ⅰ、証拠のレベルはLevel C(低)
Class Ⅰ=手技・治療が有用・有効であることについて証明されているか、あるいは見解が広く一致している(推奨/適応)
Level C(低)=専門家の合意が勧告の主要な根拠となっている場合

Ⅱa-C:勧告の程度はClassⅡa、証拠のレベルはLevel C(低)
ClassⅡa=データ・見解から有用・有効である可能性が高い(考慮すべき)
LevelC(低)=専門家の合意が勧告の主要な根拠となっている場合

Ⅱb-C:勧告の程度はClassⅡb、証拠のレベルはLevel C(低)
ClassⅡb=データ・見解により有用性・有効性がそれほど確立されていない
(考慮しても良い)
Level C(低)=専門家の合意が勧告の主要な根拠となっている場合

 続いて同氏は、「我々が行っているPEAも万能ではない。CTEPHの根治治療はPEAしかないと良く言われているが、肺高血圧が残存したり再発したりする症例がある」と指摘した。これまでの比較的最近の報告では、幅はあるが6%~31%に、こうした症例が認められるという。

 そこで小泉氏は、「PEAとBPAをうまく使いながら、循環器内科医と心臓血管外科医が一緒にCTEPHチームとして治療適応を考えていくのがベスト」と考えている。同氏らは、「PEA後にBPAを行うハイブリッド治療も取り入れている」という。

 さきほど同氏が紹介した東京医科大学病院におけるPEA実施48例についても、生存47例のうち肺高血圧が遺残した10例に術後BPAを施行したという(図7)。「手術でも完全血行再建は難しい。PEAで中枢病変を摘除し、肺高血圧が改善されたところで術後に残った末梢病変を治療するという戦略も、循環器内科医と心臓血管外科医による我々CTEPHチームの目指すところと考えている」(小泉氏)。

図7 CTEPH-PEAの遠隔成績

図7 CTEPH-PEAの遠隔成績
(東京医科大学病院)(提供:小泉信達氏)
mPAP:平均肺動脈圧 / TPR:末梢血管抵抗

まとめ

 小泉氏は講演を次のようにまとめた。

表 まとめ

  • CTEPHにおけるUCSD分類は手術分類であり、PEA適応を決定するため画像診断の確立が望まれる。
  • PEAの成績は安定してきているが、中枢型に末梢型を併存する症例では、術後にPHが残存し治療に難渋した。
  • 重症例4例に対し、Central ECMO+IABPを使用した急性期治療を行った。
  • また遺残PHの10例に対し、BPAを施行しPHの改善を得た。
  • CTEPH teamによる集学的治療により、更なる治療効果が期待される。

CTEPH: 慢性血栓塞栓性肺高血圧症
UCSD: カリフォルニア大学サンディエゴ校
PEA: 肺動脈内膜摘除術
PH:肺高血圧
Central ECMO+IABP: 開胸下体外式膜型人工肺+大動脈内バルーンパンピング
BPA: バルーン肺動脈形成術

 討論の場でPEA適応決定の質問に対して小泉氏は、「我々の施設では、循環器内科と心臓血管外科が定期的にカンファランスを行い、症例を供覧してPEA実施の可否を決めている。病変部の内膜が非常に硬くて、BPAでは無理だろうという症例もある。手術は超低体温・間歇的循環停止の状態で実施されるので、中枢型で適応と考えられても合併症が生じるリスクがあれば、手術を行わない症例もある」と述べた。また「既にBPAを行ったことのある症例でも、手術が難しくなることはない。講演でも紹介したように、PEAによる末梢の取り残しや再閉塞に対して循環器内科でBPAを行ってもらうこともある。このように症例によってはPEAとBPAのコンビネーションによる治療が望まれる」とも述べた。
 手術成績アップの工夫を問われた同氏は、「余り無理をしないことだ。手術成績には術者の経験も大きく影響する。成績には症例の病態も関係しており、罹患期間が長い、肺動脈が太く石灰化を伴っている、血栓量が多いといった症例は難渋する場合が多い」と答えた。なお、ワーファリンによる抗凝固療法は、外科治療の場合も術前・術後を通して終生必要になるという。

  • ※1:「急性肺血栓塞栓症と異なり、CTEPHでみられる血栓は淡白色を呈していて、器質化した血栓が肺動脈に固く付着しているので、手術ではこの器質化血栓を肺動脈内膜とともに摘除する必要がある。このため手術術式はpulmonary thromboendarterectomy(PTE)といわれていたが、進行したCTEPHでは血栓がない場合もあり、2003年のベニス会議以後にpulmonary endarterectomy(PEA)へと変更になった」

    「循環器病の診断と診療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)肺高血圧症治療ガイドライン2012年改訂版
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nakanishi_h.pdf
    (2017年8月閲覧)」より引用

     なお同ガイドラインではPEAを「肺動脈血栓内膜摘除術」としており、この訳語が広く使われているが、ここでは小泉氏が講演で使った「肺動脈内膜摘除術」を訳語とした。
  • ※2:NYHA心機能分類Ⅲ度:通常以下の身体活動で症状発現、身体活動が著しく制限される
    WHO肺高血圧症機能分類Ⅲ度:身体活動に著しい制限のある肺高血圧患者
    安静時に自覚症状がない.普通以下の軽度の身体活動では呼吸困難や疲労、胸痛や失神などが起こる

    「環器病の診断と診療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)肺高血圧症治療ガイドライン2012年改訂版
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nakanishi_h.pdf
    (2017年8月閲覧)」より引用
  • ※3:
    Ⅰ型:中枢型(主肺動脈や葉間動脈に壁在血栓が存在する)
    Ⅱ型:中枢型(区域動脈の中枢側に器質化血栓や内膜肥厚がある)
    Ⅲ型:末梢型(区域動脈の末梢側に内膜肥厚や線維化組織が存在する)
    Ⅳ型:細動脈病変で手術適応はない

    各型の説明は、
    「環器病の診断と診療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告)肺高血圧症治療ガイドライン2012年改訂版
    http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_nakanishi_h.pdf
    (2017年8月閲覧)」より引用

Part Ⅰ 虚血性心疾患

Part Ⅱ 心不全

Part Ⅲ 肺高血圧症

Part Ⅳ 不整脈

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