高齢者の心不全

社会の高齢化に伴い、高齢者の心不全が増えています。
息切れや動悸などの症状があっても「年のせい」と思い込んで、そのままにしていませんか?

心不全の診断と検査

心不全かどうかを診断するためには、まず、息切れや動悸といった心不全特有の症状があるか問診を行い、さらに、聴診、胸部X線検査、心電図検査、心エコー検査、血液検査などのさまざまな検査を行って、総合的に判断します。

診察の際に行う「聴診」は、聴診器で心臓の音を聴く検査で、心雑音やふだんは聴こえないⅢ音やⅣ音がないかどうかを確認します。心雑音がある場合は、弁膜症などの病気が疑われます。呼吸の音も重要で、心不全では呼吸に伴って肺がプチプチ、パリパリいう「ラ音」が聞こえることがよくあります。

「胸部X線検査」は、心臓が拡大していないか、肺に水が溜まっていないか、肺の血液のうっ滞がないかなどを調べる検査です。正常の場合、心臓の大きさは肺の大きさの50%以内で、それより大きいと心拡大となり、心不全が疑われます。

「心電図検査」は健康診断などでもよく行われる検査です。心電図の波形から、心筋梗塞や不整脈などの病気の有無が分かりますが、心不全特有の所見はないといわれています。

「心エコー検査」は、心臓の形状を調べる検査です。心臓の壁の厚さ、弁の状態、心臓のポンプ機能などを調べることができ、聴診で疑われた弁膜症の確定診断を行う際にも、心エコー検査が重要になります。

高齢者に多いとされる「収縮機能が保たれた心不全」(HFpEF)を診断する際にも、心エコー検査が用いられます。心エコードプラー法という心機能を調べる検査では、拡張機能を評価することができます。

また、心不全診療では、「血液検査」も有力な手がかりになります。採血を行って、心臓から分泌されるホルモンの一種である脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)を測定します。BNPには、血管を広げ、尿を出す作用があります。血管が広がれば、心臓は楽に血液を全身に送り出せます。また、尿が出ることで、余計な水分や塩分が排泄させることで、むくみや息切れが改善されます。このように、心臓に負担がかかったとき、心臓が自分を守るために出すのがBNPなのです。一般的にBNPが高値であるほど症状は強く、重症になるとされています。

病院によっては、BNPのかわりに、NT-pro BNPを測る施設もあります。NT-pro BNPは、BNPというホルモンのいわば副産物です。通常の血清で調べられるので、開業医でも比較的簡単に検査することができます。

このように、BNP、もしくはNT-pro BNPは、心不全の診断に欠かせないマーカーであり、日本心不全学会も2013年にステートメントを発表して、BNPやNT-proBNP値を用いた心不全の診断がスムーズに行えるよう、診断基準などをまとめています(図15)

図15:心不全診断におけるBNP・NT-proBNPのカットオフ値
図15 心不全診断におけるBNP・NT-proBNPのカットオフ値
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