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高齢者の心不全

高齢者に多い「収縮機能が保たれた心不全」

心臓には、血液を循環させるための二つの機能があります。全身へ血液を送り出すための「収縮機能」と、全身から戻ってきた血液を取り込むための「拡張機能」です。以前は、左心室の収縮力が低下し(左室駆出率が50%未満)、左心室が拡大した「収縮機能不全」が心不全の主な原因と考えられていました。しかし、最近の研究から、高齢者の心不全の半数は、収縮力が保たれているにもかかわらず、左心室が硬くて広がりにくいために、心不全症状を呈する「拡張機能不全」というタイプの心不全であることが分かってきました。簡単にいえば、心臓へ血液が戻る力が弱くなっているため、うっ血が起こり、むくみなどの症状が起こりやすいといった特徴があります。実際には、拡張能を正確に評価することが難しいため、「収縮機能が保たれた心不全」(heart failure with preserved ejection function: HFpEF)と呼ばれています。

このタイプの心不全は、「収縮機能の低下した心不全」(heart failure with reduced ejection fraction:HFrEF)」と同じように予後が悪いということが疫学調査などから明らかになっており、収縮機能が正常だからといって、決して安心できないことがわかります。〔※『高齢者の心不全』の記事中では、「収縮機能の低下した心不全」(HFrEF)を「収縮不全」、「収縮機能が保たれた心不全」(HFpEF)を「拡張不全」という表記で統一します〕。

拡張不全は、収縮機能は保たれているため、症状が出にくいのが特徴です。収縮不全の場合、胸部X線で心陰影が大きくなっているなどの所見が認められますが、拡張不全では、収縮機能が正常に保たれているため、こうした所見がはっきりしないことも多いのです。確定診断には、心エコー検査のほか、血液検査の脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)の測定が決め手になります。BNPは、心臓の筋肉から出るホルモンで、心臓に負担がかかっているとき、心臓が楽になりたくて出すいわばSOSのサインといえます。

治療は薬物療法が中心となります。血液のうっ滞に基づく症状をとるために利尿薬や血管拡張薬などが用いられます。

超高齢社会の日本では、潜在的な拡張不全の患者さんはかなり多いと推定されます。高齢者、女性に多く、高血圧や糖尿病・肥満のほか、心臓の病気などの基礎疾患を持っている人、とくに身体活動度の低い人に多いため、症状に気づきにくく、放置してしまうケースも少なくありません。わずかなサインも見逃さず、いつもと違う症状が現れたら、早めにかかりつけ医に相談して、検査を受けるようにしましょう。

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