子どもの心臓病について

監修:住友直方(埼玉医科大学 国際医療センター 小児心臓科 特任教授)

もし、あなたが心臓になんの疾患もなく、元気に生活しているのであれば、
ぜひ知ってほしいことがあります。

2023年5月 改訂

Q&A

親が先天性心疾患の場合、子どもが先天性心疾患になる確率は高くなりますか。
はい。若干高くなります。心房中隔欠損、大動脈弁狭窄、肺動脈閉鎖、心室中隔欠損、動脈管開存などで平均3~4倍発生率が高くなると言われています。同胞内再現率(兄弟で同じ病気を持つ確率)も若干高くなると言われています。
妊娠中に風疹にかかると子供が心臓病になると聞いたことがありますが、どうでしょうか。
母親がワクチン接種歴や風疹感染の既往がなく、特に妊娠3カ月以内に罹患すると、胎盤を通じて風疹ウイルスが胎児に感染し、難聴、白内障、先天性心疾患(動脈管開存、肺動脈狭窄、心室中隔欠損症、心房中隔欠損症など)、網膜症、精神運動発達遅滞、などの先天性風疹症候群を発症することがあります。このため、女性は妊娠前に、またパートナーの男性も、ワクチン接種歴や風疹感染の既往がない場合には、風疹ワクチンを接種する必要があります。
心室中隔欠損で、自然に塞がる小さな穴は何ミリくらいですか。
大きさだけでなく、穴の空いている場所も関係します。日本人で最も多い、膜様部心室中隔欠損で、大きさが2~3ミリ以下なら2~3年以内に4~5人に1人は自然閉鎖する可能性があります。また筋性部や流出路の心室中隔欠損でも自然に塞がる可能性もあります。流出路の心室中隔欠損は、大動脈基部のバルサルバ洞が心室中隔欠損を閉鎖するために、大動脈弁が変形して大動脈閉鎖不全を合併することがありますので、自然に穴が塞がっても手術が必要になる場合があります。
幼・小児期に弁置換手術をした場合、成長するにつれ、心臓や血管径の大きさが変わることで取り換える(再手術する)ことがありますか。
はい。しかし最近の機械弁は過去のものと比較して同じサイズ(口径)でも血流の通過する面積が広いため、大動脈弁では女性で17mm、男性で18mmのサイズの機械弁であれば標準の体格の日本人成人でも小さすぎる事はありません。しかし大柄な体格の成人になる場合や、パンヌスという炎症性瘢痕組織の増生により弁口が狭まる場合には、大きなサイズの機械弁に取り換える必要があります。一方僧帽弁では20mm未満のサイズの機械弁は成長に伴って大きなものに取り替える必要があります。大動脈弁同様、大柄な体格の成人になる場合、パンヌスの増生を生じた場合はそれ以上のサイズでも取り換えが必要です。
年齢、体重によって、手術のリスクは違いますか
特に新生児~3カ月以内、未熟児のリスクは高くなり、1歳以上と比較して4~10倍になります。ただ、3ヵ月以内に手術が必要になるのは、それだけ重症で、手術を待つことが難しい心臓病ですので、心臓病の種類によっても手術のリスクは大きく変わります。心室中隔欠損、動脈管開存などの手術であれば、早期に行ってもそれほど大きなリスクにはなりません。
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